第48話 エデンの追放─⑤
「そっか。……めちゃくちゃ他人事なんだけどさ、未来さんって俺を産んだ人だろ? 感動の再会も特にないし、他人のいざこざに巻き込まれたって感覚が強いんだよな」
「それはそうだろう。顔も知らない人だ。俺の気持ちとして、もう二度と未来とは会ってほしくない。けど、お前はどうだ?」
「さっき、接近禁止令がどうのって言ってなかった?」
「言ったさ。あくまで俺の気持ちだ。息子の気持ちを考えるなら、いくらか譲歩する」
「気にはなってたんだ。どんな人なんだろうって。だけど、会ったら納得できたものがあったし、もう会わなくてもいいかな。どんな姿でどんな性格とか、そういう問題じゃないんだ。仲良くしたくて会いたかったわけでもない。自分なりのけじめみたいなもの? よく説明できないや。父さんに対して悪いとか、そういう気持ちでもない。会って腑に落ちたというか」
「当たり前にある日常はお前にはなかったんだ。気にはなる。俺が会わせたくなかったのは、未来は病気で、心だけじゃなく身体も傷つけられる恐れがあったからだ」
「大丈夫。父さんの気持ちも理解してる」
それだけではないのも理解している。「養育費もまともに払わないような親は親と呼べない」と父は言った。少なからず「自分はここまで息子を育てた」という意地があったはずだ。そんなプライドは邪魔なものではないし、あったからこそ育てられたのだ。そんな父を立てたいと、心から思った。
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