33 関&鷹城
「…僕だけじゃなく、病棟の全員を無差別に狙うなんて」
高槻香奈が護送に来た警官達に引き渡されていくのを見送りながら鷹城がいう。その隣に立ち、静かに廊下を遠く連れられて行くのを厳しい視線で見つめながら橿原がくちにする。
「彼女の性質としてこれまで起こした犯罪を考えれば、当然の行動ともいえるでしょう。これまでの犯罪でも彼女は、ターゲットを絞らずに、多くの無辜の人々を標的に選び、無差別に多くの人達を同時に狙うことによって、その満足を得ていたのです」
「くそ、わけがわかんねえ」
関が吐き出すようにいい、車椅子の鷹城の背に手を掛ける。
「関?」
「まだ病室で本来は寝てろっていわれてるんだろ。滝岡がうるさい。で、確か本当は車椅子も電動の奴以外は禁止じゃなかったのか?」
睨む関に、鷹城が両手を軽く膝の上にあげていう。
「この病院に用意がなかったんですよ、電動のは、――最新式が置いてあって、怪しまれたら困るじゃないですか。ちゃんと途中からはあの警備についててくれた警察官に押してもらいましたから」
「いまはもういないよな?それとも、橿原さんに押してもらうか?」
鷹城が橿原を見て動きをとめる。
「ええと、―――」
「関さん、どうぞ。僕、死んだ方も運ぶのは若い人達にお任せしていますから」
橿原が譲るのに大きく頷いて。
「かしこまりました。ほら、鷹城、前を向いてろ」
「向いてるよ、…ねえ、自分でやれるから、」
「それで文句をいわれるのはいやなんだよ、滝岡に」
「にいさん、…それはいうだろうけど、でもね?あれは過保護なんであって、――」
関が黙々と車椅子を押す。
「関、普段は全然、にいさんのいうことなんて聞かないのに、だから、自主独立っていうのがね?」
関に車椅子を押されながら抗議している鷹城に、後ろを歩きながら橿原がしずかに微笑む。
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