4 関と橿原 ――山中――




「鬼灯ってしってますか」

「勿論知っていますが、鬼灯ですか?」

山腹の川沿いを車を降りて灯を手にして足許を照らして歩きながら、関が橿原に話しかける。草の繁る足許を同じように橿原もLEDライトで照らしながら口にする。

「鬼灯はナス科ホオズキ属の多年草で、学名Physalis alkekengi―――――

赤い実を提灯に見立てて、お盆の精霊棚に飾ったりもいたしますね。それに、全草に微量のアルカロイドが含まれていて、根や地下茎からは酸漿根という生薬が取れます。江戸時代には堕胎薬としても使われていました。現在でも生薬として解熱剤として使用している地方などもあるようですが、妊婦への使用は流産の恐れがある為禁忌です」

「よくご存じですね」

「それで、その鬼灯がどうかしましたか?」

「俺は、鬼灯が薬になるなんて知りませんでしたよ。…子供の頃、脹らまして遊んだことならありますけどね」

「そうですか」

「鷹城のばかは、俺が捜査にいった先にいましてね。捜査といっても確認だけだったんですが、以前の証言を確認してくるだけだったんで、許可をもらって一人で出向いてきまして。何しろ、ご存知かと思いますが、人手不足ですから」

「そこに鷹城君がいたと」

「そうです」

足を止めて関が周囲を確認するようにする。

再び登り出しながら、今度は足を速めていく関に。

「関さん、それで、君は何を心配しているのです?」

「…わからないんですよ。…わからないんですが、…橿原さん!」

関が叫んで、目にしたそれを手にしようと走っていく。

「橿原さん!」

関が叫ぶのに橿原が手にしていた灯を空中へ向ける。空に浮き上がる白い線に関が飛びついて手を伸ばして捉える。

「…橿原さん、」

糸を手繰り、最初に空中に目にしたその赤い風船を手に関が橿原に示す。

「糸が続いています、関さん、あちらに」

「……―――!」

風船についていた糸を辿り、関と橿原が坂を下り始める。



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