花に似る(20首)

午後四時の桃のゼリーが炭酸の中でゼリーと桃に分かれる


観てほしいとかではなくて存在を知ってほしくてタイトルを言う


新聞を読む人のことを聞いていて新聞いいなと思うひととき


何も見ず描いたあなたがどうしても花に似るのはなんでですかね


味噌汁のしじみから身が落ちていく見た目と中身どっちが飾り


うつくしい貝にそうするようにして小さいセロハンテープを拾う


顔と名が一致しなくて道端の花に接するように接した


持ち方をどうこう言わず川風はわたしの箸の隙間を抜ける


良い場所に置くと約束しますからわたしが勝ったら駅をください


反撃と受け取られない反撃よご飯からご飯の味がする


眠れない人の部屋から眠れない証拠がいくつも押収される


こんな道あったかしらと思う犬 犬の生涯にもそれはある


園庭で遊ぶ園児を想像し想像を見守る日曜日


うどん/そばぐらいの軽い選択の繰り返しで幸せになりたい


どちらかがたまに話を聞き逃す流しそうめんみたいな時間


好きな人にはたまらない ゆでたまごの向こう側から光はさして


この世には濡らしても良い鍵があるその喜びも銭湯のなか


忘れるのなんて一瞬パックからジュースの味の空気をすする


リコーダー鳴らすみたいに笑ってる 強いて言うなら自分の味方


さよならをようやく告げてあなたからわたしという玩具を取り上げる

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