最終話 第5回FLOW世界王者、伝説を残す
会場中にまだまだ大歓声が響き渡る中、プロチームのユニフォームで揃えた2人の男性がこちらに歩いてくる。
というか、よく見たことある人だ。
『GOOD GAME、そして優勝おめでとう。エル──いやレイ、アミア』
俺たちにも伝わりやすいようにゆっくりと英語で話しかけてくれる。
「こちらこそ、最高のゲームをありがとうございました。ミュンヘンさんにカナルさん」
BASTARD Qの面々である。
彼らの「やりきった」という表情からも、いいゲームを行えたみたいだ。
し〜たけさんから聞いていた「浮かない顔」も、すっかり消えていた。
『知ってるかもしれないが、俺たちは2人に憧れてこのゲームを本格的に始めて、ここまで上がってこれたんだ。世界大会の舞台はリアルだから2人に会えると思って頑張ってきたから、今日は本当に嬉しかったぞ』
「いや…………ごめんじゃん」
公には引退した本当の理由が公開されてないので、というか話しづらいことなので、ただシンプルに謝る。
『いやいや、謝ってほしいわけじゃないし、むしろ感謝してるんだ!』
「感謝?」
『あぁ。この舞台にまた戻ってきて、そして世界を獲ったことにな。ま、俺たちも本気で世界獲りにきてたのも本当だがな!』
その言葉からは、ファンとして本当に喜んでいる様子が伝わってきて、俺は柄にもなく泣きそうになってしまった。
正面から言葉を聞いて、改めて復活してよかったと思えた。
……チヤホヤされたくて復帰したとか、絶対言わない方がいいよな、うん。
「ちょいちょい、ワイたちも混ぜてくれや! は、はろーミュンヘンとカナル! レイとアミア、優勝おめでとうやで!」
2人と話していると、キノコ組の2人も俺たちの元に来た。
めっちゃたどたどしい英語だった。
……ってか、こんな自由でいいのか?
ま、なんか言われるまでは気にしないけど。
「ありがとうございます。 最後、いい勝負でしたね」
「ほんまになー! ってか、し〜たけ式で決めようかと思ってたんに、なんや最後の! あんなん勝てへんわ!」
「そりゃ、俺たちだっていつまでも過去に囚われているわけにはいきませんからね。でも、アレをできたのは、昨日のし〜たけさんのおかげでもありますよ」
「えっ、いやぁ……はは……そ、そうやろ?」
「男の照れは売れませんよ?」
「売りじゃないわ!」
『っと、呼ばれてるぞ?』
し〜たけさんといつもの調子で話していると、カナルさんがプレイスペースの中央に視線を向けながら教えてくれた。
俺もそちらを見ながら、現地の司会進行の声に耳を澄ましてみる。
『────しているところですが、そろそろ来ていただきましょう! 第5回FLOW世界王者に輝いたチームFILM-0の、レイ選手とアミア選手!!』
第1回、第2回と変わらないその言葉を聞いて、このあとトロフィーやらインタビューやらがあることを明瞭に思い出す。
「アミア、行くか」
「おう」
一瞬視線を交わし、横に並びながらプレイスペースの中心へと歩き出す。
『改めておめでとう!』
俺たちの背中に、カナルさんが称賛の言葉を投げかけてくれる。
そして、それを皮切りに────
『ナイスファイトだったぜ!』
カナルさんが健闘を称えてくれる。
「悔しいけど、おめでとうやで!!」
し〜たけさんのその声音からは、顔は見えないけどいい笑顔であることがよく伝わってきた。
「お前たちが主役だ!」
namekoさんも後悔の無いすっきりとした声で言ってくれる。
彼らに続くように、名前しか知らないような他の選手たちも俺たちに拍手を送ってくれる。
中には、たどたどしくもはっきり「おめでとう」と日本語で言ってくれる人もいた。
「おめでとおおおおおっすーーーー!!!!」
そんな中、突然大声が会場に響き、俺はぎょっとして反射的にそちらを向いてしまう。
するとそこには、観客席から身を乗り出し、俺たちに大きく手を振っているあおちと、それを抑えるさくちの姿があった。
離れていて見えづらいが、少し泣いているようにも見える。
だが、その表情は花が咲くような笑顔だった。
よく見れば、2人の側には佐倉さんやナルク、果てには工藤さんまで来てくれていた。
みんな、俺たちの応援のためにここまで────
「泣くなって」
「……泣いてねーよ」
「声震えてんじゃん。そんなに嬉しかったか?」
「ったりめーだろ。だって──」
「大丈夫。分かってるよ、みんな」
少し目頭が熱くなりながらもなんとか抑え込み、司会のもとに辿り着く。
その後、少し定型文の質問に答えていき、ついに最後の質問が投げかけられた。
『最後となりますが、会場に訪れてくれた方々や今このライブをご覧になっている視聴者の方々に一言お願いします!』
一言、か……。
俺、こういうのあんまり得意じゃないんだよな。
チラッとアミアを見てみる。
「いや、お前が答えなよ」
「えぇ……でも俺こういうの──」
「いいんだよ、そんな細かいの気にしなくて。今のレイとしての素直な気持ちを伝えれば」
レイとしての素直な気持ち、か…………。
【俺が久々に無双したらおもろそうじゃね?】
そんな些細なことから始まったこの物語。
最初は、ただ騒がれたい、チヤホヤされたい一心だった。
【elle式じゃなくてRay式としてまた流行らせれば、トレンドに入って……!】
その気持ちの延長線で、新人VTuber『Ray』となり0から世界を獲ることを決めた。
思えば、この時俺の気持ちが固まったのかもな。
そして、大切な同期であり仲間の3期生とも出会った。
【──もうネタは上がってんだ】
過去の物語に、完結という幕を下ろす覚悟も出来たし、俺が頑張る意義も見つかった。
【──……アミア、悪あがきするぞ】
その圧倒的な差と、自分の未熟さに、一度は心がズタズタにやられてしまった。
だが、過去とは違った。
たくさんの仲間たちが励ましてくれた。
俺を、elleという過去のしがらみから解放してくれた。
elleの頃とは違う、Rayとしての姿。
そんなことを振り返ると、自然と言葉が溢れてきた。
「俺はこのFLOWというゲームに人生を賭けました」
「ぽっと出の人が世界王者の座を掻っ攫っていったように見えるかもしれませんが、ここまでの道のりにはたくさんの挫折がありました」
「ふらーっとやって、終わるつもりでした」
「ですが、俺にはたくさんの仲間たちがいた」
「俺に、頑張る理由が出来たんです」
「1つの物事に人生をかけることは、誰よりも楽して他のことから逃げているように見えて、実はめちゃくちゃ辛いことなんです」
「でも、それにめげずにたくさん努力して、努力して、努力して。その先にあるものを掴み取るんです」
ここまでは、俺の話だ。
ここからは、みんなへの話である。
「──あのとき夢中にさせてくれたこと。諦めないでいたこと。信じてくれたこと。それらすべてに感謝の気持ちを持つんだ」
「俺も、まだまだ成長の途中。どこまででも大きくなれるんだ」
なんか、応援歌みたいな言葉だな。
俺は思わずクスッと笑ってしまう。
長ったらしく話すのも──違うな。
────そうだな。まとめれば、
「俺たちはたしかに第5回世界王者──チャンピオンだ。だが、それとともに俺たちはチャレンジャーでもある。だって俺は────」
一度言葉を区切り、アミアの方を見る。
続きの言葉が分かったのか、アミアはニッと笑って返してくれる。
その笑顔につられるように、俺は自信を持って最後の言葉を告げる。
──過去と決別し、未来への素晴らしい希望を持って、そして『無名の新人』として0から世界を獲りに行った俺として、世界中の人々へ最高のエールを届けるように──
「俺は──最強新人VTuber、Rayなんだから!」
《あとがき》
FLOW〜引退した初代世界1位の元プロは、『無名の新人』として0から世界を獲りに行く〜
これにて、【完結】となります!!!!!!
12万字強に渡り、応援してくださりありがとうございます!!
最後は少し、らしくないものとなりましたかね?
私の気持ちも込めて、レイに言ってもらいました。
皆さんの心に残っていただけばと思います!
そして、改めてここまで読んでいただきありがとうございます!!
初の長編完結ということもあり、めちゃくちゃ感極まってます……!
稚拙な文章ながら、完結まで読んでいただき幸せな作品と作者です。
面白いと思っていただけましたら、星を入れてくれるとめちゃくちゃ嬉しいです!
卑しい話、『完結ブースト』なるもので、またたくさんの読者に読んで欲しいので……。
目指せ書籍化!
という最後の遺言を残したところで、【お知らせ】です!
残念ながら、続編とかではないです……。
ですが、今後3話ほど『番外編』を投稿する予定です!
まさか『最終話』から『最終回』に言葉を変えただけで気づかれるとは思ってませんでした……()
また、こちらは構想が完全に0なので、少し投稿期間が空きます。
よければ作品フォローなどしてお待ちしていただけますと幸いです!
そしてそして!
こちらも完全未定ですが!!
ゲームの世界を舞台とした新作を公開予定です!!
本作を楽しんでいただけた方が好きなものとなる……はずです!
タイトルは、
『俺だけ全クリしているVRMMOで、デスゲームが始まった』
です!
まだまだ先の話ですので、『作者フォロー』などしてお待ちいただければと思います!
それでは────
ご愛読ありがとうございました!!!!
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