忘れられた元世界一のプロゲーマーさん、別名義で参加したアジア大会でうっかり魅せプ無双してしまった結果VTuberにスカウトされる

もかの@NIT

第1話 元プロさん、ミスる

elle:おい聞いてくれよアミア

aMa:おうどしたイルゥ!!!!よ

elle:エルな

elle:どんな巻き舌してんねん、というか!!!!が付いたら酔っ払いの奇声にしか見えんわ

elle:それはそうと、俺めっちゃ面白そうなこと思いついたんだが

aMa:な、なんだってぇー!?

elle:というわけで俺たちの仲は5年で終わりということで

aMa:さらばだイルゥ!!!!よ

elle:引き止めてくれよ


elle:んでさ、なんかもうすぐ『FLOW』のアジア大会の予選あるらしいじゃん?

elle:そこで俺が久々に無双したらおもろそうじゃね?

aMa:んでもって、デュオ大会だから俺と一緒に出て欲しいと

elle:そゆこと

aMa:俺はいいけど、エル戦えんのか?

aMa:このゲームもう4年プレイしてねーだろ

elle:いや、実は1ヶ月前からサブ垢でまたやりだしてな

elle:今シーズンいろいろおもろいしやりてーなって

aMa:そゆことか

aMa:ま、俺はアジア大会出るつもりなかったしいいぜ

elle:マジで?さんきゅー

aMa:まぁ俺もこのゲームやるの2年ぶりなんだけどな

elle:マジかよおい

elle:までもアミアならできるだろ

aMa:まぁな


aMa:てか、俺は本垢でやるのか?

elle:もち

elle:『夢の最強タッグ!?』って騒がれてー

aMa:下心丸出しでウケる

elle:バレたか



 そのメッセージが送信されると、elleこと俺──八神やがみかけるはサブモニターでチャットツールDescodeを表示したまま、メインモニターで大人気FPSゲーム──FLOWを起動した。


 5年前からサービスが始まったこのゲームは、今になっても人気が途絶える気配は無い。


 ゲーム起動のロードを終えると、2つのアカウントの選択画面が表示された。


 左には世界で俺しか持っていない、【FLOW初代世界チャンピオン】のバッジがついたアカウント──『elle』

 右には初心者同然で、なんの特徴もないアカウント──『Ray』


 俺は4年ぶりに左のアカウントからログインし──ようとすると、通知音がなったのでサブモニターに視線を移した。



aMa:あと10分で始まるらしいから通話するぞ

elle:おけ

elle:あでも待って

elle:トイレ行ってくるわ

aMa:早めに行っとけよ……俺も行ってくるわ

elle:人のこと言えねーじゃねえか


 俺はゲーミングチェアから立ち上がり、トイレに向かった。


 その後、ついでに水分補給やらなんやらも済ませてから、自室に戻った。


 すると、サブモニターはちゃんとついていたが、メインモニターの画面は真っ暗になっていた。


「そうだった。ログイン画面で置きっぱにしてたら、スリープモードになるんだっけか」


 俺はメインモニターを再び起動しFLOWにログインしつつ、Descodeに目をやった。



aMa:おいエル

aMa:あと2分で始まるぞ?

aMa:まだか?

aMa:ねえねえねえねえねえねえねえねえ

aMa:おーい



 ……うむ、完全にゆっくりしすぎたな。



elle:ごめ、生命活動してた

aMa:何カッコつけてんねん

aMa:通話こい



「こんこんきーつね」

『何元気に著作権引っかかりそうなことしてんねん。急げって!』

「ちょ待って、手だけはちゃんと動かしてるから」

『ほんとや、クリック早すぎだろ』


 カチカチカチカチ、とコンピューターを急かすようにクリックする。


『おい無双するならマジで時間無いって!!』

「ごめんて、もうすぐ行けそう」


 お、やっとロードが終わった──!!!






 そして、俺は慣れた手つきでのアカウントからログインした。

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