第肆章 -1- 洋館と茶会の後
「なるほど。つまりお主はその
姫はガラス造りのまるテーブルを挟んで、細い指先で縁の広いバラを
通された部屋は広く
まるで違う世界に迷い込んだ気になる。
私の目の前にもヤハズの用意した紅茶が置かれており、ヤハズは
「ヤハズと姫に邪魔されなければ、今頃すべては終わっていたんだがな」
私は腕を組んでふたりを交互に見る。ヤハズは瞼を下ろすことなく黙ってたたずんでいる。その姿は人形そのもので、隣の姫はクスクスと口元に手を当て少女のように笑った。
実際少女であるのだろうが、人形でもある。姫は造られ魂を持った人形だ。少女と言えるかどうかも
「それは悪かった。夜は
ふん。とヤハズは私には視線を向けずに、窓の方を眺めたままに口を開く。
「姫が謝る必要はありません。汚らしい異質の力を振るう男が、
「ずいぶんな言いようだな。俺を
「そんな余裕はない。我々と同じ同族を襲う輩に私と姫の存在がばれたのだ。警戒するのは当たり前だろう。今だって変わらない」
そりゃそうだけどさ。と私は茶器に手を添え紅茶を口に含む。甘酸っぱい花の香りで口から鼻腔が満たされる。少なくともヤハズと姫が私が求める男と何の関係もないことは、ヤハズを煙に巻いてわかった。悲しい因果も背負っているだろうことも。
姫の力は影からイバラを生み出すことだった。それだけではないとは思えるが、姫のイバラに包まれて私は屋敷の中へと運ばれた。身動きできずに影に飲まれて、洋室へと通されていたのだ。
小躍りしながら落ち着かないようすで衣服を整える姫は、ヤハズに茶会の準備を指示しこの末路である。私は誤解を解くために出刃包丁の男について話した。そして
ただ開襟シャツの男は自分たちと同じ存在だとは感じていた。自分たちと同じ人ならざる物であると。付喪にも本能があるのだろうか?人が人を守るように、物が物を守ったということになる。・・・難儀だ。
それにふたりは今まで払ってきたどんな付喪とも違う。浮世離れし異質である。ただ人ではないとはふたりとも知っている。知りながら生きている。人の形を
まぁ人からすると私もまた、似たような存在であるのだろうけど。
「しかし・・・お主の言うことが本当なら、妾は付喪之人と呼ばれる存在なのだな? 不思議じゃなぁ。そして妾の成り立ちをお主が知っていることもな」
「それは秘密だよ。結末まで話したらおもしろくはないだろう?」
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