第23話 田舎の猫 奴隷を手に入れる
命があるならば例え首から下がなくても元の体に戻るというチートさが売りの『リカバリー』。このスキルのチートさは、ゾンビでさえ生き返らすことができるんじゃないかと思うほど。ま、実際のところはゾンビは死んでるから無理なんだけどね。
その力で元の体に再生された奴隷たちは正に狂喜乱舞した。涙を流しながらお互いに抱きしめあい、大声で私に感謝の言葉を述べ……。ついでに私に抱きつこうとした男の奴隷は蹴っ飛す。どさくさに紛れて乙女に抱きつこうなんて考えは甘いのよ。
こうして男の奴隷が3人、女の奴隷が5人再生完了した。○村再生工場に勝るとも劣らない成果である。約束通り男の奴隷たちの身柄を引き受け、女の奴隷たちには奴隷商人の元へ返す。女の奴隷たちには、最後まで面倒をみてやれなくて申し訳ないけど、ネクストステージでも頑張れと一言告げて。
言葉は悪いけど彼女たちは不良在庫だったのだ。マイナスからのスタートではあるが、これより下はない。そういう気持ちで頑張れば、きっとそれなりの幸せを掴めるはずだ。そう信じて私は彼女たちとお別れした。
男の奴隷たちにはまぁ、かなり幸せな未来が待ってるはずだから何も言ってやることはない。私の『リカバリー』は『全て』を完治させてるはずだからね。例えEDでも……。あ、最初に確かめたけどLGBTのGの奴隷はいなかったよ。
という訳で3人の男たちを手に入れたけど、マーシャさんの希望の数にはまだ届かないんだよなぁ。まぁ、奴隷商人にとって奴隷は商品だ。不良在庫をそんなに抱えてたら、商人としてどうなんだろうってことになる。3人でも多い方なんだろうな。仕方ない、足りない分は人攫いの男に期待しよう。男にはマーシャさんから預かった少なくないお金を預けてある。それなりの人数を手に入れてくれるだろう。私はそう考え、再び奴隷商館の裏手に戻った。
そこでラフィとラビィの姿を見つけると、私は早速問いかけた。
「話はついたの? ちゃんと誤解は解けた?」 するとラビィが答えた。
「すっかりすっきりですわ~」
続いてラフィが言う。
「わ、悪かったわよ、疑って……」
二人の話をまとめるとこうだ。1週間前にラビィが奴隷商に向かう前、ラフィに向けて手紙を残した。「旅を続ける資金がなくなったのでしばらくアルバイトする」と。
しかし、ここで不幸なすれ違いが生じた。ラビィの使う文字は獣人文字だったのだ。獣人文字は人間の使う文字とは違う。その存在を知らない人間にとっては、獣人文字は落書きにしか見えないのだ。話す言葉自体は同じだから、筆談でもしない限り気づかないよなぁ。そういうことかあ……
ただまぁ、人間と生活圏を同じにしている獣人は人間の文字も習得してるし、人間の方も獣人文字の存在を知ってるんだよね。町の中のお店のメニューなんかでは、ちゃんと両方の文字で表記されている。この世界にも前の世界と同様に、様々な言語や文字が存在しているんだよね。だから同じメニューを見ていても、二人とも違う文字を読んでいたのに気付かなかったんだろうね。
しかも、頭に血が上り易いラフィのことだ。ラビィが人攫いの男に奴隷商へ案内されているのを見たら、連れ去られたと勘違いしても仕方ない。
……仕方ない? いや、全ては……ラフィが悪いっ! ラビィが連れ去られた(と思った)時に、ちゃんと男に問いただせば良かったはずなのだ。奴隷商に乗り込んで直接ラビィに話を聞くこともできたはず。それなのに、勝手にラビィが売り飛ばされたと勘違いして、人に呪い(のろい)をかけて、自分も死にかけて……。バカじゃないのっ? いや、バカだったわ……
『貴女も大概だけどねえ……。目くそ鼻くそを笑うって諺知ってる? 貴女の元いた世界の諺なんだけど』
いずれキャティとはもう一度よく話し合う必要がありそうだ……
そこで私は現実に戻り、笑顔で言った。
「誤解が解けて良かったわね」と……
切り替えの早さは私の数少ない美点である。 さて、これでこの件は解決だ。ラビィはもう少しの間アルバイトを続けるということなので、ラフィは一人で修行することにしたらしい。精進せいよ、いろいろとな。
その後人攫いの男から新たに3名の奴隷を手に入れたとの報告を受けた。いずれも心身共に健康で、エルフ村(ファティマ村って言うらしい)での生活についても理解させたとのこと。お互いに良い取り引きができたようだ。
私は合計6名の奴隷たちをインドアに招き入れると、人攫いの男と共に奴隷商を後にした。ラフィ? そんな子もいたわね……
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