第7話 『ギャルと一緒に萌え萌えキュン』


 ある日の昼休み、いつものように隣に座る水島が、何か楽しそうに俺に話しかけてきた。


「ねえねえ、桜庭くん!今度さ、メイドカフェとか行ってみたくない?」


 その言葉に思わず固まってしまった。メイドカフェ……?

 ずっと気になってはいたものの、今まで一人ではさすがに行きづらく、勇気が出ずに行けずじまいだった場所だ。


「メ、メイドカフェ?」


 俺は少し声が裏返ってしまう。


「そう!桜庭くん、行ってみたくない? あ、もしあれなら、ウチも一緒に行くしさ!」


 水島は無邪気な笑顔で言うと、スマホを取り出してメイドカフェのサイトを見せてきた。

 そこにはメイド服を着た可愛らしい店員さんたちが、笑顔でお客さんを迎えている写真が載っている。


「ほら、この服、可愛くない? 見て見て!」


 水島が嬉しそうに写真を指差す。


 確かに、写真に写るメイド服の店員さんたちは可愛いし、店内もテーマに合わせた雰囲気が出ていて、普通のカフェとは違った魅力がある。

 だけど、まさか水島がこんなに興味を持ってくれるとは思わず、俺は驚いてしまう。


「……本当に、一緒に行く気か?」


 俺は思わず尋ねた。


「うん!桜庭くん、好きそうだなーって思って!一回くらい行ってみたいし、桜庭くんが喜んでくれるならウチも嬉しいしさ!」


 水島のその言葉に、心がじんと温かくなるのを感じた。

 俺が行きたがっていた場所を察して、彼女が自分から提案してくれるなんて。


「ありがとな、そう言ってくれるだけで、すごく嬉しい」


「えへへ、じゃあ決まりね!メイドカフェデート!」


 水島は満面の笑みで言い、早速どのお店に行くかを一緒に決めようと話を進めてくれる。

 俺もだんだん楽しみになってきて、気が付けば二人で熱心にデートプランを練り始めていた。


 放課後になり、水島とメイドカフェデートの計画を立てるために、カフェに寄ることにした。

 二人でデートについて具体的に話すのは初めてのことで、緊張しながらも心が弾む。


「でね、デートだから、どんな服で行こうかなーって思ってたんだけどさ」


 水島が楽しそうに言いながら、「メイドカフェとかオタクの感じに合わせた服の方がいいのかな?」と真剣な顔で聞いてきた。


 その質問に俺は思わず照れくさくなり、顔が熱くなるのを感じた。


「え、いや、そのままでいいよ……」


 正直、いつもの自然体の水島と一緒に行きたい。それでも、彼女が俺のためにそこまで考えてくれているのが嬉しすぎて、顔が赤くなってしまう。


「そっか、じゃあ普段通りで行くね!でもなんか、こうやって桜庭くんの喜ぶ顔を想像しながらプラン考えるの楽しいかも!」


 水島は恥ずかしがることなく言い切ってくれる。その言葉に、俺の心はさらに温かくなっていく。





 ******






 週末、水島と一緒にメイドカフェにやってきた。

 店に入ると、内装はアニメや漫画の世界を思わせる可愛らしい雰囲気で、何もかもが非日常的だ。

 少し緊張していた俺とは違い、水島は入店してすぐにキョロキョロと周囲を見回している。


「わぁ……こんな感じなんだね!メニューも可愛い!」


 水島はメニューを手に取ると、楽しそうに一つひとつ眺めている。

 俺も隣に座り、彼女の顔を見ながらつられて笑顔になってしまう。今まで一人で来る勇気がなく、いつか行ってみたいと思っていた場所だけど、水島がいることで思い切り楽しめる自分がいるのが驚きだった。


「ねえ、このオムライス頼もうよ!ほら、ハートが描いてあるよ!」


 水島がメニューを指差しながら興奮気味に言う。

 オムライスには小さなハートが描かれていて、頼むと可愛いメイドさんが「おいしくな〜れ」と魔法をかけてくれるらしい。


「……それ、俺たちもやるってことだよな?」


「当たり前じゃん!せっかく来たんだから、やらないともったいないよ!」


 水島はノリノリで、迷うことなくオムライスを注文してくれる。

 さすがに恥ずかしいが、水島がこんなに楽しそうにしているのを見ていると、俺も少しずつ「やってみようかな」という気持ちが湧いてくる。


 しばらくして、店員さんがオムライスを運んできてくれた。

 可愛らしいメイド服の店員さんが、にこやかに「一緒にオムライスをもっとおいしくする魔法をかけましょうね!」と笑顔で促してくれる。


「いきますよー!せーの、『おいしくな〜れ!萌え萌えきゅん!』」


 店員さんが掛け声を出してくれると、水島は全力で「萌え萌えきゅん!」と元気よく唱え、ハートマークを作るポーズまでしている。

 そんな水島の姿に思わず吹き出しそうになるが、彼女がノリノリで楽しんでくれている姿を見ると、俺も少しだけ勇気が出てきた。


「……おいしくな〜れ!萌え萌えきゅん!」


 恥ずかしいながらも、俺も店員さんと一緒に声を合わせ、照れ笑いしながらポーズをとる。

 水島はその姿を見て大笑いしながら、「めっちゃいい感じじゃん!」と俺を褒めてくれた。


 その無邪気な笑顔に、胸がじんと熱くなるのを感じる。

 俺がずっと行きたかった場所で、彼女が心から楽しんでくれていることが本当に嬉しかった。


 オムライスを食べながら、水島がふいにぽつりと言った。


「桜庭くんといると、なんだかすごく楽しい!」


 その一言に、思わず手を止めてしまう。

 俺が好きな場所や趣味を、彼女が一緒に楽しんでくれている。

 そのことがどれだけ貴重で、幸せなことなのかが胸に響いてくる。


「俺も……水島と一緒にいると、楽しいよ」


 素直に返すと、水島は少し照れくさそうにしながらも、「ふふ、嬉しいな」と頬を赤らめた。

 俺たちは何も気を遣うことなく、お互いに楽しさを分かち合っている。そんな関係が心から心地よく、幸せだと感じる。


 帰り道、彼女がふと手を伸ばして俺の腕に軽く触れる。


「またこういうとこ、一緒に来ようね!」


「もちろん。また一緒に来よう」


 彼女の楽しそうな横顔を見て、俺も自然と微笑む。水島と過ごす日々がこんなに楽しいものだなんて、以前の俺では想像もしていなかった。

 

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