アリスと釣りの授業
今日の冒険の授業は釣りについてだ。
お母さんが前に話していた通りというか、授業のカリキュラムに普通に釣りの時間があった。
初っ端から海釣りであるが……。
「餌をくくりつけて竿を投げる。ウキが沈んだら素早く竿を引き上げる……まぁそう簡単に釣れるとは思わないから今日は形だけでも覚えてくれ」
クラスの皆に釣り竿と餌が配られた。
餌は普通食べることの無く臭いが強いゴブリンの肉だ。
臭いが強いためかゴブリンの肉は魚が良く食いつくらしく、血が滴っているくらいが本来ならちょうどよいらしいが、餌にしやすいようにミンチにされて肉団子にされていた。
それでも結構臭いがキツイが……。
ジーク教官に言われた通りに釣り針に餌を付けて海に投げ入れる。
じっと待ってみるがなかなか魚がかかることが無い。
「お! またヒット!」
魚釣りが上手かったのはメアリちゃんでどんどん魚を釣っていく。
私も真似して釣りしているのに全然引っかからないのはなぜだろうか……。
メアリちゃんが5匹釣り上げた時にアナちゃんもヒットし、アナちゃんはバケツに入るギリギリサイズの巨大なコブダイを釣り上げていた。
ちなみにであるが普通の海に魔物は殆ど居ない。
居るとしても1階層に居るような低級モンスターしか居ない。
理由は魔物は基本ダンジョンから生まれる物であり、ダンジョンから出てくる場合はダンジョンの入り口から出てこなければならない。
そのためダンジョンの入り口が海と接続しているような小規模なダンジョンくらいからしか魔物が海に出ることは無く、そういった魔物はサメとかシャチに普通に負けて食い殺されるのがオチである。
まぁ逆にダンジョン内に普通のサメが入ってきて群れた魔物やモンスター達になぶり殺しにされることもあるらしいくらい。
ダンジョンの中では魔物やモンスターが強く、外では普通の生物が強い……みたいな感じだ。
極稀に例外もあり、ダンジョンでは低級モンスターでも、外で長年生き残ってしまい、体が大きくなって巨大クラーケンに成長したという事例もあるのでなんとも言えないが……。
基本的には海は安全圏とも言える。
安全圏でも船旅をする場合はダンジョンアタックとは別に船での仕事でやる事が多いのは変わらないが……。
結局私は全く釣れなくてボウズだったが、放課後に釣った魚を料理して食べようという授業となり、希望者だけ集まって魚を料理することになったが、私達のクラスは全員参加だった。
釣られた海の魚は大きい魚は3枚におろす。
それから色々な料理に変えていく。
小さな魚は頭を落として骨ごとたたきにすることが多いらしい。
ただ寄生虫の観点から生で食べることは少なく、刺し身の場合は一度冷凍して寄生虫を殺してから食べるらしい。
今日の場合は焼いたり煮る。
3枚におろした大きな魚は炭火で焼いて、たたきにした小魚は適度な大きさに丸めて肉団子にし、味噌汁に入れて食べる。
一度学校に移動してから調理室で包丁を借りて調理していく。
釣れなかった子も多く魚を釣った子から魚を譲ってもらい調理に参加した。
アナちゃんは料理人の子供ということで魚を3枚におろすのが上手で先生からも手本にするようにと褒められていた。
褒められたアナちゃんも満更でもないようでニコニコしながらも顔を真っ赤にして照れていた。
私は大漁だったメアリちゃんに魚を譲ってもらいたたきにしていく。
魚の頭は良い出汁が出るので最初に集めて大鍋でリリー先生が煮込んていく。
味噌でベースを整え、長ネギ、玉ねぎ、人参を入れて良く煮込み、最後に肉団子を入れて少し煮込む。
これでつみれ汁の完成である。
焼き魚も完成したので今回はお米を炊いたご飯を主食に食べる。
ワロン島では基本パン食がメインであるが、米も他の島との交易で手に入るので食べようと思えば食べられる。
ただ船で冒険する時にご飯は水を大量に使って炊かなければならないので贅沢と思われるらしい。
それこそ船に水属性冒険者が常駐しているような大型ギルド船でないと米の選択肢は出てこないらしい。
「神に感謝を」
「「「「神に感謝を」」」」
食事前に食べられることに対して神に感謝して食事を始める。
自分で料理したためかいつも以上に美味しく感じる。
「なになにアリス! 泣くほど美味しさに感動しているの?」
「メアリちゃん。いやお母さんとかの手伝いで料理したりしていたけど……こう釣りして学校で料理を作る体験によって味に思い出補正が入ってる感じで……」
「確かにそれはわかる。自分が釣った魚を食べているって凄くおいしいんだね」
するとジーク教官が来て
「お、アリスとメアリ、それにアナも良い食べっぷりだな」
声を掛けてきた。
「ジーク教官! ダンジョンで倒したモンスターとかも思い出補正で美味しいみたいなことってあるんですか?」
「勿論あるぞ。苦労して倒したモンスター殆ど美味いからな」
「なるほど……」
「まぁそれでも料理する人の腕があることには越した事は無いから。3人も島の外で冒険者がしたかったら料理はしっかり覚えておいた方が良いぞ」
「「「はーい」」」
こうして初めての釣りの授業は終わるのだったが、クラスの子供達の多くは釣りにハマって遊びの一環として釣りをする子が多くなるのだった。
私やメアリちゃん、アナちゃんも学校が休みの日で何も無ければ釣りをして釣った魚をアナちゃんの家に持っていってアナちゃんのお父さんやお母さんに魚料理を色々教わったりするのだった。
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