清廉な椅子・再レース
伏潮朱遺
第1章 ホワイトタイガーの競争
0
やっと家に行けると思って浮かれていた数時間前の俺を殴りたい。
俺を自宅に呼ぶイコール俺を自宅に呼びたい以外の理由があるに決まっている。
彼女ができた。
またか。
来週デートに行く。
はいはい。
どこに行ったらいいだろう。
彼女の希望は。
動物園。
またか。
また姉貴じゃないだろうな。
違うかどうか写真を見てくれ。
違った。
違ったから余計に絶望した。
小柄で可愛らしいタイプの女が奴の好み。
なんで俺と真逆なんだ。
今度の出会いは。
知り合いの紹介。
こいつに無限に女を紹介している奴は誰なんだ。
いっそ供給源を絶つか。
真面目に選んでほしい。
こっちとそっちとあっちのどの動物園がいいか。
どれでも同じだ。
誘われているのが俺でなければ。
しかしこの寒空の下、動物園か。
ライトアップが綺麗。
知るか。
帰る。
奴に呼び止められたような気がしたが無視した。
遠くで鳥が鳴いている。
駄目だ。
今回こそフラれた。
夜。
雨も降ってきた。
降り始め特有の独特な異臭がする。
冷たい雨粒が眼に入る。
傘は手元にない。
早く戻ろう。
寒い。
足を速める。
雨脚も強まってきた。
外灯が心許ない。
足元がよく見えない。
なにか、
大きな物に躓いた。
転びこそしなかったが、雨で靴の裏が滑った。
黒い大きな塊。
黒い液体が雨と混ざる。
ああ、
またか。
俺が出歩くと遺体に出くわす。
清廉な椅子・再レース
第1章 ホワイトタイガーの競争
1
埼玉県警察北浦和警察署。
22時。
お馴染みの取り調べはどこで受けてもそう変わらない。
しかし、今までで一番待遇が良かった。
なにせ取調室ではなく応接室だった。
窓もあるし、茶も出る。
遺体は先週に捜索願が出ていた80代の老年男性。
死因は胴や脚に何十箇所もあった刺し傷からの失血死。
死亡推定時刻は、遺体発見から最低24時間以上前。
遺体は両脚を縛られ、膝が曲がった状態で発見された。
椅子に座らされた状態で殺されてそのまま椅子だけ消滅したかのような姿勢で。
手首は肘掛けに固定されていたようで、両脚を縛った縄と同じ形状の跡が残っていた。
先月から埼玉県警本部に配属された鬼立がそこまで一気に喋った。
「お前、デートどころじゃなくなったぞ」
「うるさい」鬼立が眼鏡のブリッジに触りながら言う。「早期解決に協力しろ」
変死体だし猟奇殺人の気配がして面倒くさい。
しかし、鬼立のデートの邪魔ができて良かったとも思っている。だいぶ不謹慎だが。
23時。
捜査本部設置を見届けてから帰宅の許しが出た。
鬼立は捜査一課にいるくせに実際の捜査はしない。
「送る」鬼立が黒のコートを羽織りながら言う。
相変わらず俺の監視が仕事だそうで。
「送ってくれるのは有難いが、泊まるとかはなしだぞ?」
「よくわかったな。そのつもりだった」鬼立があっけらかんとした様子で言う。
己の数時間前の浮かれ具合に打ちひしがれた男の家に泊まるとか、とても正気じゃない。
「やめてくれ。布団もねぇんだから」
「ソファ、はなさそうだな。毛布でも借りれたら適当に眠る」
「風邪引かれたら困るから帰ってくれ。お前が来るまで出掛けないようにするから」
なんだろうな。
本当に。
なんなんだろうな。
「わかった。約束は守れよ」鬼立はやっと諦めたようだった。
駐車場で鬼立の車に乗る。警察車両じゃなくて己の車を使っている。
「続くと思うか」鬼立が言う。
「こんだけで満足はしねえだろ。前科がないのがおかしいくらいぶっ飛んでる野郎だと思うがな」
雨脚はまだ弱まらず。
運転席を眺めるわけにいかないので、ワイパーがぎゅんぎゅん動くのを見つめていた。
俺の家も鬼立の家も市内にはあるが、車で移動したほうがいいくらいには距離がある。
気軽に会いに行ける距離でもどっちにしろ足しげく通えない。
アポなしで行って女と真っ最中だったらどうすればいい?
「明日も迎えに行くから」鬼立が横付けで降ろした。
「俺を出歩かせた方が2件目3件目が見つかりやすいと思うがな」
「これで終わらないんだな?」
「言ったろ。なんなら今までで一番ヤバい」
鬼立が顔をしかめる。
「捜査はしねえんだろ? だったら精々俺を見張ってろ」
「わかった。また明日」
「おう」
明日も会えるのか。
それは結構嬉しい。
フラれたことはちょっと棚にあげておいて。
鬼立と(一方的な)再会をしてこれで3件目の事件か。
12月。
恋人たちの一大イベントまでに駒を進められればいいが。
なんであいつはあんなに女を作りたがるんだ?
まだ試してる最中なのか。
いや、それは女に失礼だからやめろと言ったはず。
だったら。
マジで好みだっただけか。
鬼立が物理的に手が届く範囲から、鬼立の好みの女が死滅すればいい。
適当にシャワーを浴びてから寝た。
夢に姉貴が出てきた。
「フラれたんだって?」
まだだ。
「でも今度は僕じゃないよ」
うまく行くと思ってるのか。
「さあね。少なくともちーろよりはいいんじゃない?」
なんで。
そんな言い方をする。
「僕はちーろが傷つくのが好きなんだよ。知らなかったの?」
姉貴はいじわるそうに笑って、何もない場所に頬杖をついた。
俺はその正面に胡坐をかいて座っている。
何もない白い空間。
姉貴と会うときはいつもここ。
長いことそうゆう部屋に閉じ込められていたからその印象が強いのかもしれない。
窓もないしドアもない。
逃げられないし抵抗もできない。
「フラれたらまたおいでよ」
「もうフラれてんだよ」
伸ばした手は天井に届かずに宙を掴んだ。
朝。
目覚まし時計はいつも鳴る前に止められる。
7時1分前。
暖房を付ける。
テレビも新聞もない。
ロールパンをかじりながらネットニュースをあさる。
昨日の遺体について個人情報が出ていた。
認知症によって昼夜問わず外を徘徊していた。
病院に入院する前日にいなくなった。
家族は、入院が嫌だったのでしょうか、入院を決めなければ良かったと涙した。
とにもかくにも被害者側の情報が筒抜けなのがこの国の悪いところだ。
これで容疑者が未成年だったら何も表には出てこない。
考えられる犯人像は、10代~30代の男。
なぜか。
異常性が悪い意味で未成熟な気がする。
これからまだまだ膨らむ。
この悪意のつぼみは。
8時。
自宅の駐車場に黒い車が止まった。鬼立だ。
「迎えに来た」
「だから、俺を放っといた方が」
「お前を放っとくと被害者が増える」
なるほど。
俺の特異体質をそうとったわけか。
「俺だって出会いたくて出会ってるわけじゃない」
鬼立が寒々しい玄関に座って待っている。
仕方ない。
着替えて鬼立の車に乗ることにした。車内は暖房が効いていて乾燥している。
「もし俺の体質がお前でキャンセルされるなら俺に24時間365日張り付くことで犯罪が防げる」
「やってもいい」鬼立がすました顔で言う。
「現実的じゃねえだろ。冗談」
「冗談なんかじゃない。そのために俺がいるんだろ」
わけがわからなくなってきた。
そんなわけがないことなんかわかっている。
「ちょっと寝る」
「着いたら起こす」鬼立が言う。
会話をしたくなくなったので眼を瞑ったのだが。
わかってるのかわかっていないのか。
鈍いのか鋭いのかよくわからない奴だ。
車が揺れる。
振動が眠りを妨げる。
鬼立の運転は控えめに言って荒い。
上手か下手で言ったらどちらとも言えない。
道交法はぎりぎり遵守しているんだとは思うが。
隣に乗った女が酔わなければいいが。
て、なんで俺は女の心配なんかしてるのか。
北浦和警察署。
鬼立の所属は県警本部なのでどこの警察署にも顔パスで出入りできる。
いいやら悪いやら。
俺をどこへでも連れていけるということだから。
熱気の立ち込める会議室の、出口に近い一番後ろの席に座った。
判明している事実の共有と今後の方針。
この事件は連続すると予測。そのために早期に捜査本部を立てた。
正面中央に座っていた男が、会議が終わった後に挨拶に来た。
見た目は50代かそこら。中肉中背の中年男性。捜査本部の責任者だと名乗った。
知らない名だ。
「上から聞いてはいるがね」鈴橋が自分の顎を撫でながら言う。「一般人なんだろう? ただちょっとご遺体に遭遇する確率の高い」
長野の件も京都の件もすっきり解決とは言い難い。
手柄がないと言いたいんだろう。
「俺は俺で勝手にやらせてもらいます。なのでそちらはそちらでやっていただければ」
「単独でかね。それはそれは」鈴橋が下品に嗤う。
どうでもいい。この手の類は無視すればいいし、利用できると思えば嫌でもすり寄って来るだけだ。
鬼立も何か言いたげな口を必死に閉じていた。
夜の間降り続いていた雨はやんだがその反動かぐっと冷える。コートを冬用にして来て良かった。
「現場か?」鬼立がキーを見せる。俺が望めば移動してくれるのだろう。
「どうせ入れねえだろ?」
昨日の今日だ。
大方ブルーシートと鑑識で封鎖中だろう。
「誰もいない部屋がないか」
空き部屋。
小さな会議室。
「ちょっと外出ててくれ」
「なんだ」鬼立が訝しげに言う。
「のぞいたら二度と協力はしねえ」
「何するかは知らんが、逃げるなよ」
逃げる?
何から。
鬼立が部屋の外に出てから内側から鍵を掛けた。念のため。
誰もいなければ出てきてくれる。
「だから、僕じゃないって」
犯人像は男。
「僕じゃないでしょ?」
なんであんな殺し方をした?
「さあね」
椅子はどこに行った?
「犯人が持ってるんじゃないの?」
椅子ごと遺棄じゃ椅子から身元が割れるからか。
「もう一つ。理由が思いつかない?」
欲しかったから。
「正解」
姉の姿が眼前から消える。
汗が額と首から噴き出る。
眩暈。
テーブルに手をついて支える。
「おい、大丈夫か」鬼立がいまの転倒し損ねの音に反応してドアノブをガチャガチャする。
「ちょい待て」
「大丈夫なんだな?」
「たぶんな」
「たぶんてなんだ」
うるさい。
本当にうるさいが。
この声が不快だと思ったことは一度もない。
呼吸を整えて。
汗を適当に拭って。
解錠する。
「おい」鬼立が部屋に飛び込んできた。ずっとドアノブを握っていたかのようなタイミングだった。「なんだ、その汗。本当に大丈夫なのか」
「犯人の狙いがわかった」
遺体は要らない。
椅子だ。
「椅子を集めてる」
2
9時半。
捜査本部の会議室に戻った。
俺が直接言うより鬼立を間に介したほうが話が届きやすいと思ったが。
「椅子?」鈴橋が馬鹿にしたような眼で見てくる。「とっくに調べているよ」
「ただの椅子じゃない。アンティークというか、椅子自体に価値があるような」
犯人は、アンティークの椅子に人間を座らせて。刃物で出血させて。座面に文様を描いている。
「それで? どうするのかね」
「アンティークの椅子を店から購入した奴とか、ネットでアンティークの椅子を販売しているショップの購入履歴とか当たってもらいたい」
鈴橋が勿体つけたような溜息を寄越す。
「私からもお願いします。更に被害者が増える前に」鬼立が頭を下げてくれた。
鈴橋の傍にいた40代くらいの黒縁眼鏡の捜査員が鈴橋に目線で確認して指示を飛ばした。実質のトップはこっちの男なんだろう。手柄だけを掻っ攫って、ミスはすべてこの男が代わりに被る。
気の毒に。
40代の男は、
「何かありましたら私のほうにお願いできますでしょうか」物腰が低そうだが仕事は早そうだった。
こうゆうのが上にいて欲しい。
「他に何か気づかれたことがありますでしょうか」佐林が言う。
「犯人像の手掛かりは?」
「凶器の特定と、拘束に使われた縄の入手先は当たっていますが」
「10代~30代の男だろうと思う」
「その根拠は」
「勘?」
「なるほど。参考にさせてもらいますね」佐林が営業的に微笑む。
刃物は胴や脚を貫通していた。すなわち座面も傷つけていた可能性が高い。
座面の布の繊維がご遺体の衣類や肌に付着していた。
椅子の特定は思いのほか早かった。
思った通り、アンティーク家具を扱うネットショップで1ヶ月前に大量購入されていた。
その住所を当たったが、ビルの一室はもぬけの殻。
おそらく受け取りだけして退去した。
とすると、椅子を運搬した車両があったはず。
防犯カメラを調べたら、1ヶ月前の映像にトラックが映っていた。椅子らしき家具を大量に搬入している男の姿も。
男はカメラの位置を把握しているのか、ニットの帽子を目深にかぶって大きなマスクで顔を覆い、身元を特定しにくくしている。服装は黒いジャージの上下。生憎、トラックのナンバーも映っていない。
空き室になっているビルの内部の捜査と、トラックの車種はわかったので車両の特定。
捜査は一気に進展したが、肝心の犯人にはなかなか迫れない。
指紋や髪の毛の一切も残っていなかったので、防犯カメラの映像だけが手掛かり。
「トラック自体が拠点てことはないか」
「だから見つからないのか」鬼立が言う。
15時。
捜査本部で情報を整理している佐林に推測を伝えてみた。
鈴橋は別室でくつろいでいるらしい。ちょうどおやつの時間だ。
「それこそ車両の特定が最優先ですね」佐林が言う。「ご協力感謝します」
遺棄現場にカメラはなかったが、車から遺棄して走り去ったのなら証拠が残っていない理由にはなる。
現場の周辺の、昨日の発見時間前後を調べた。
いた。
車の走行方向を追跡するも、県外に出てしまった。
群馬県警に協力を要請する。
群馬県警どころか、関東は勿論周辺の県の広域に跨って捜査を依頼しなければいけないかもしれない。
最後にトラックがカメラに映っていた場所を捜索する。
結論から言うと見つからなかった。
聞き込みをするもそんなトラックは見ていないと言う。
車を乗り換えた可能性。
18時。
「お疲れさまでした。今夜はもうお帰り下さい」佐林が気を遣って声をかけてくれた。
夕飯を適当に外食して。
鬼立に自宅まで送ってもらった。
「明日も来るからな。夜も出歩くなよ」鬼立が釘を刺す。
「気が向いたらな」
「おい」
「わかってるわーってる」
お前が来てくれるなら大人しく待つよ。とは言わずに。
このまま一週間以上事件が長引けば、あいつはデートどころではない。断るしかない。
例えそれが延期だとしても、俺はそのほうが嬉しい。
20時。
シャワーを浴びてから、犯人が大量購入したというネットショップを見てみた。
アンティーク家具の売買、査定。と大きく明示してあった。
例の大量注文の椅子は銘柄はバラバラだが、一気に10脚の注文があったとかいう。
10脚?
被害者の数ではないだろうか。
メールが来ていた。
鬼立じゃない。
差し出し人は、
白い虎。
椅子野郎の居所を知りたいか
返信した。
お前は誰だ。
電話がかかってきた。
非通知。
「白い虎だっつってんだろ?」
若い男の声だった。
知らない声。
「もう一度聞く。お前は誰だ」
「だーかーらー、白い虎のビャクローちゃんだっつってんの。俺ら会ったことあんよ?」
知らない。
「ベイ=ジン関連か」
「他にねえだろ? 逃げ出したちーろちゃんよ」
俺のことはばっちり知られているわけか。
俺はお前のことを何も知らないのに。
「椅子野郎ってことは、顔見知りなのか」
「俺が助言してやったからな。テメェの欲望に正直にって」
「余計なことを」
「でも生き生きしてんぜ? 今まで生きてて一番楽しいってゆってたぜ」
「殺人幇助で罪になるんだが」
「そうだったかぁ? ぜんぶ白い虎がやったことなのになぁ」
「お前はどこにいる?」
「俺の居場所聞いたとこで椅子野郎は見つからねえぜ?」
「何のために俺に接触した?」
「面白れぇから?」ははーっと、軽快に笑った。
ビャクロー。
本当に憶えがない。
姉貴に聞いたらわかるだろうか。
「えんでちゃんは元気してんの?」
思考が読まれた気がしたがそんなわけはない。
「そっちで調べりゃいいだろ」
「だな。俺が知らねえことなんかねえしな」
ビャクロー。
奴は敵か味方か。
「いまんとこな。ちーろちゃんの邪魔はしねえけど、今度はわからねえぞ」
「いちいち思考を読むな」
「ちーろちゃんの考えそうなことくらいお見通しってよ」
「一つだけ。椅子野郎とやらの犯行は続くのか」
「続くもなんも、現在進行形だぜ? 今度出歩いたときにわかんだろうがよ」
電話が切れた。
掛け直しはできない。
ベイ=ジン関係者なら国内にいないはずなのだが。
遊びに来ているのだろうか。
夢で姉貴に聞いた。
「ベイ=ジンの後継者を守る護衛だね」
護衛がいるってことは。
「後継者が遊びに来てるんだろうね」
来るなよ。
「ビャクローは自称500歳の虎だから。後継者が死ぬたびに脳を削られる。身体を乗り換えて生き延びてる」
マジな話?
「ちーろ、会ったことあるよ」
眼が覚めた。
いつもの7時1分前。
メールで地図が届いていた。
ここに来いと言うこと。
もたもたしていたら鬼立が来てしまう。
着替えて電車に乗った。
指定された駅で降りて、タクシーに乗った。
山の中。
あった。
ご遺体。
椅子に座らされた姿勢で硬直している。
油断した。
屈んだところを、
後頭部に一撃。
やばい。
視界が。
男物の靴が見えた。
W
白い虎に出会った。
白い虎は、俺にやりたいことがないか聞いてくれた。
俺は、
「なんでもできんの?」と冗談混じりに聞いた。
白い虎は得意そうに頷いた。
じゃあ。
この椅子に紋様を付けたい。
綺麗な。
二度と見られない。
二つと存在しない。
「わーった。りょーかいよ」と白い虎は笑って。
徘徊ジジイを拾ってきた。
徘徊ジジイは、家を探しているようだった。
ので、
こっちだと案内した。
椅子に座らせて。
椅子に括り付けた。
ちょっと暴れたけど、白い虎が首の後ろに衝撃を与えたら静かになった。
持ってた刃物を徘徊ジジイの太ももに刺した。
ジジイが起きて暴れた。
その度に白い虎が静かにさせた。
何度も。
何度も。
何度も何度も刺した。
ただ、間違って心臓を刺したぽくて。
徘徊ジジイが死んでしまった。
人が死ぬと尿と糞便が垂れ流れてくる。
椅子を汚したくなくて。
拘束を解いたが間に合わなかった。
失敗だ。
椅子が糞尿まみれ。
「最初はこんなもんじゃねえの?」白い虎が言った。
「これ邪魔だから捨ててきてくんねえ?」椅子ごと。
「はいよ」
白い虎は死体を担いでどこぞへ跳んで行った。
そのくらい身軽だった。
さて、2体目。
椅子もたくさん用意したし、じっくり紋様を付けよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます