15


 その後、バイトが終わり、こうくんとカフェを出て、歩道を歩く。


「きよら、あのさ、バイト始めたのは」


 わたしは力なく笑う。

「分かってる、彼女に会う為、だよね……?」


「は?」


「お似合いだと思う、だから」



「悪女、今日でお終いにするね」



 こうくんは両目を見開く。


「今までありがとう、感謝しています」

「これ、今まで貰って貯めてたバイト代」



「いらねぇよ!!」



 わたしが委縮するとこうくんは顔を右手で隠す。


「……ごめん、大声出して」

「頭冷やしてから帰るから後は好きにして」


 こうくんはそう儚げに言い、一人で歩き出す。



 …………あぁ、

 悪女、終わっちゃった。



 早く帰って、荷物まとめて、

 これから新しく住むところ探さなきゃ。


 そう思うのに、



 こうくんがいない明日なんて、もう考えられない。



 わたしはこうくんを追いかけ――――、

 後ろからぎゅっと制服の裾を掴む。



「一人で帰るだなんて、もう無理」

こうくんと一緒に帰りたい」


こうくんの悪女はこの先もずっとわたしだけだもん」


「一緒にいさせてくれるのなら、どこまでも堕ちたっていい」



「……何それ」



「俺、悪女だなんて一度も思ったことないよ」



 わたしは絶望してパッと制服の裾を離す。


 するとこうくんは振り返ってわたしを愛おしそうに見つめる。

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