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 わたしは顔を上げる。


 さくら色の髪をした制服姿の男子が心配そうにわたしを見つめていた。


 隣のクラスの、顔を見た瞬間惚れてしまう程イケメンな こうくんが目の前にいて、わたしは驚き固まる。


「大丈夫じゃなさそうだな」

「何があった?」


 こうくんの優しい問いかけにわたしは感情を抑えられなくなり、泣きながら事情を話した。


「そうか、辛かったな」

花形はながたさん、行く当てはあるのか?」


「ない、です」


「なら」


 こうくんはわたしの前にしゃがみ、真剣な瞳で見つめる。



「俺の悪女にならないか?」

「女避けしてくれたら、バイト代も出すし家に住まわせてやるよ、どう?」



 そう問われた瞬間、

 あふれ出る涙が、まるで光のように輝く。



「悪女扱いには慣れているので構いません」

世浪よなみくん、引き受けます」



「――よし、決まりだな」

「これからお互い名前で呼び合うってことで」


 こうくんは優しく笑う。



「今日からよろしく」


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