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こうから離れなさいよ! こんの悪女が!!」


 べちゃっ。


 上級生の怒鳴り声と共にソフトクリームが、

 わたしの長髪にべっとり付いた。


 そんな昼休みを過ごすわたしは、花形はながたきよら、15歳。

 黒葉くろば高校に入学して一ヵ月経つけど、今日もこの通り、「悪女扱い」されてます。


 少し開いていた1階の廊下の窓をガラっと全開に開けて、

 わたしの隣にかっこよく飛び降りてくるさくら色の髪をした男子、

 世浪皇よなみこうくんのせいで。



「俺のきよらに何してんの?」



「ひえっ! こうごめんなさい!!」


 顔を青ざめた金髪女子の上級生は謝り去っていく。


「きよら、ごめん。一足遅かった。大丈夫か?」


「うん、大丈夫、制服に付かないように回避したから」

 わたしは笑い、鞄からタオルを出す。


「それにしても、せっかくのふわふわのソフトクリーム、勿体ない」


「ソフトクリームより自分を気にかけなよ」

「きよら、ほら貸して」


「あ、うん」

 タオルを手渡すとこうくんはわたしの髪をタオルで拭いて、くん、と香りをかぐ。


「こ、こうくん!?」


「甘い香り」


 こうくんの行動と髪の香りの方が甘いです。


「髪早く洗った方がいいな、帰ろう」 


 こうくんはわたしの手を握って歩き出す。



 キミの悪女になった日のように。


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