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 わたしはびっくりしてローファーを床に落とす。

 床に転がるローファー。


 なんで、そんなこと言うの?

 もうここから動けない。


 ……もう帰れないよ。


「え、灰野はいのさ…」


「ごめ……びっくり…して…」


「…灰野はいのさん、覚えてないかもしれないけど」


「夏休み前に俺、階段で下駄箱の鍵落としたの」

「サイズ小さいから気づかなかったんだけど」


灰野はいのさん、届けてくれて」

「めっちゃ可愛い顔で微笑んでくれてさ」



「誰にも見せたくない」

「俺のにしたいって思った」



「それで礼言いそびれたから屋上階段まで上がって行ったんだけど」



「……隣に座るのが精一杯だった」



 あの日、ドキドキしてたの、

 わたしだけじゃなかったんだ…。


 わたしの両目から、ぶわっと涙があふれた。

 涙が零れ落ちていく。


「あ、勝手に語ってごめ…嫌だったよな」


「違う」

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