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灰野はいのさん、こっち」


 藤原ふじわらくんと廊下側の一番後ろまで移動する。


「あ」

 わたしは両目を見開く。


 ロッカー横にある黄色のビニール袋がかけられた白いゴミ箱の中に黒いローファーが捨てられていた。

 左右にリボンが付いてるから間違いない。


「これ、わたしのローファー…」

「なんで…」


「…あやりが捨ててるの偶然見たんだ」


「え…」


「ごめん、俺のせいで」


 違うよ。

 藤原ふじわらくんは何も悪くない。

 悪いのはこんなぼっちな身分で藤原ふじわらくんを好きになったわたし。


 首を横に振って否定すると、

 藤原ふじわらくんがゴミ箱に右手を突っ込む。



藤原ふじわらくん!? 手汚れちゃうよ!?」



 藤原ふじわらくんは無視してローファーをゴミ箱から右手で取り出す。


「汚いのに…ごめんね」



「汚ねぇのは捨てた奴」

「お前は綺麗だよ」



 ドキッとすると、

 藤原ふじわらくんはわたしにローファーを手渡す。


「あ、ありがとう」

「これで帰れる…」



灰野はいのさん、もう一個渡してもいい?」


 真剣な顔……。


 もう一個?


「何…?」


 藤原ふじわらくんはイチゴのホワイトチョコレートが入った袋を差し出す。


「え? わたし先月何も渡してな…」



「これ、俺の気持ちだから」


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