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「ローファーがない……」

 3月14日の放課後。下駄箱の扉を開けたら、ローファーがなかった。


 鍵、かけたつもりなのに……。


 そんないじめられっ子のわたしは、灰野羽留はいのはる、16歳。

 前髪パッツンの黒ロング。

 もうすぐ春休みで高校2年生になる。


 ローファー消えたの、またマドンナの仕業かな……。


「はぁ……」

 わたしは深いため息をつく。


 今日はホワイトデー。

 女の子達が男の子達からバレンタインチョコのお返しを貰う大切な日。


 だけどそのせいで、わたしのローファーは消えたんだと思う。


 同じクラスに八方美人でマドンナって呼ばれてる、あやりっていう女の子がいて、

 金髪のふわふわセミロングでシンデレラっぽく、

 絶賛片思い中の藤原琉翔ふじわらるかくんにお返し貰えるって自身満々に言ってた。


 藤原琉翔ふじわらるかくんは王子様級のかっこよさで、

 絶対1度は好きになってしまう、

 チェリーコーラみたいに刺激的な男の子。


 そんな彼からのお返しをずっと待っていて、

 結局、貰えなかったみたいで、

 帰りのHRホームルーム終わった後、偶然教室で目が合って……。



 『今、笑ったでしょ』



 そう言われて全力で否定したけど、だめだったみたい。


 奴当たりでわたしのローファー隠したんだと思う。


「どうしよう…ローファーないと帰れないよ…」


 担任に言ってローファーの代わりの靴貸してもらおうかな…。

 でも高校で靴なくすなんてありえないから、いじめられてるって思われるかも…。

 それはやだな。


 とにかくローファー探そう!

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