03



ハナちゃんを好きだと思ったのは、いつからか分からない。

ふと、ハナちゃんの事を堪らなく愛しく思ったんだ。

きっかけがあった訳じゃなくて、なんなら今までの全てがきっかけで、募りに募って『好きだ』って、思った。


でも、言えなかった。



「ごめん、待たせちゃった」


「そんな事無いよ。ねぇ、本当にいいの?」


「うん、危なくなったら家に帰って、最期の日を迎える約束してるから。ハナちゃんこそ、いいの?」


「うちはもうじゅーぶん、一緒に過ごしたからね! 最近家族と時間を過ごしてばかりで、タロちゃんに全然会えてなかったし」


「それはお互い様だよ。ハナちゃん、友達は? ちゃんと話した?」


「もちろん! もう沢山泣いちゃった。私、釣られてつい泣いちゃうんだよね~」


「確かに。僕が泣く時もハナちゃん泣いちゃうよね」


「そうなの。なんか気持ちが高ぶっちゃって。だからタロちゃん、今日は泣かないでね」


「うっ。だって……もう、ハナちゃんに会えないと思うと……」


「ほらぁー!もう、止めてよぉ、涙出ちゃうじゃんっ」


「ご、ごめんっ」


「……もうさ、この場所でタロちゃんとお喋りするのも、最後なんだねぇ」

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