江東区の団地の一室(死亡理由)

この部屋ではシングルマザーである母親と一人息子が暮らしていた。特に不自由もなく、日々を送っていたという。ついこの間、息子がニ歳の誕生日を迎えた。

そんな幸せの最中のことである。

交通事故だ。

駅前の交差点で彼らは命を落とした。

飲酒運転の四輪車に跳ね飛ばされたのだ。

その凄惨な姿はテレビでも取り上げられた。

轢き逃げだ。

血溜まりは色濃くアスファルトに伸びて、

言葉もないままこの世から消えていった。

あの日のままの部屋は遺族である彼らを遠ざけるべく

日常からかけ離れた場所にあった。

泣き崩れた母親、その様子を見守る父親、

落胆した表情を浮かべる兄。

まるで時間が止まっているような空間は、

音を置き去りにしたような

報われない場所になった。

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