心理的瑕疵映像のすゝめ
雛形 絢尊
世田谷区のアパートの一室のレポート
この部屋の一角からは机が見える。
四つの柱に支えられた木材の匂いが漂う机だ。
パンか何かの破片が無造作に
転がり落ちている。
その他気になることといえば、特にない。
床に何かが散乱している様子もない。
何か物が置いてあるわけでもない。
何かしらの家具があるはずだが、それもない。
ただひとつ、この一角から見えるのは
画面の右奥の、白い台座だけだ。
彼はこの場所で命を落とした。
よく見ると床の変色している。
東京都内のある一室の様子だ。
この部屋にはもう借り手が付いている。
しかしながら、ご覧いただこう。
これが異変である。
画面左を確認していただきたい。
白いモヤのような物が浮遊している。
それは綿菓子のようにも見える。
ゆっくりと画面の左へと進んでいく。
が、その姿が止まった。
カメラに気づいたのであろうか。
白く透明な体から両目が浮かび上がる。
その目は徐々にカメラに近づいてくるのだ。
閉じ、また開ける。
彼は再び、画面の左の方へと向かう。
何を思ったのか右足を台座に乗せた。
続いて左足も乗せる。
彼はテーブルの方に体を動かした。
姿が透明になった途端、台座が前に倒れる。
彼は毎晩この場所で命を落とし続けている。
了
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