第17話 中沢貞祇の青春編
1. 兄妹の誓い
新徴組の隊士としての生活が始まる前、貞祇はまだ若干18歳で、家族を養う責任を背負う少年だった。幼い頃から琴と共に過ごし、親が亡くなってからは姉弟二人三脚で生きてきた。琴は妹として貞祇を慕い、彼もまた、妹を守ることを誓いながら日々の生活に耐えていた。
ある晩、家の裏庭でふたりは向かい合って座り、空を見上げながら話していた。
「兄さん、私は…あなたを誇りに思う。でも、戦場に行くのが怖いよ」
琴の声は震えていたが、その目はしっかりと貞祇を見つめている。
「怖い気持ちは分かる。でも、妹よ、俺が守る。お前のため、家族のために、戦わなければならないんだ」
貞祇はしっかりと琴の肩に手を置き、決意を新たにした。
「一緒に生きて、そして家族を守る。必ず戻るから、待っていてくれ」
琴は無言で頷き、その手を強く握り返した。その瞬間、ふたりの間に流れる深い絆が感じられた。
2. 新徴組での激闘
新徴組に加わった貞祇は、剣術や戦術を学び、数々の戦闘に参加する。激しい戦の中で彼は戦士として成長し、仲間たちとの絆を深めていった。戦場では命をかけた戦闘が繰り広げられ、彼の戦績も次第に評価されるようになったが、常に心の中に琴のことがあった。
ある日、彼は戦闘の最中に重傷を負い、意識を失った。仲間たちが必死に彼を救い、戦の後にようやく意識を取り戻す。
「貞祇…貞祇兄さん!」
目を開けると、目の前に琴の顔があった。驚きと安堵が交錯した表情で、彼女が涙を流しながら彼の名を呼ぶ。
「琴…どうして、ここに?」
琴は何も答えず、ただひたすら彼の手を握り締めた。しばらくして、彼女は言葉を絞り出すように告げる。
「兄さんが戻るまで、私は待っているから。生きて、必ず帰ってきて」
その言葉に貞祇は涙を浮かべ、強く頷いた。
「お前がいる限り、俺は死なない。必ず帰るからな」
3. 戦場での決断
戦況は日々厳しくなり、ついには命を懸けた大決戦が迫った。新徴組の隊士たちは壮絶な戦いに挑み、貞祇も前線で戦い続けていた。その中で、彼は一度命を落としかけるが、奇跡的に生還した。
だが、その後、戦の終息を迎える暇もなく、貞祇は次なる命令を受ける。それは自らの命をかけた決断を伴うものであった。
彼は最前線で仲間たちと共に敵陣に突撃し、傷つきながらも前進を続ける。戦場の中で彼の身に何度も死が迫るが、その度に彼は琴の顔を思い浮かべて耐え抜いた。
戦が終わり、貞祇は無事に帰還することができた。しかし、重傷を負った身体と精神は、かつての輝きを失っていた。
4. 再び家に戻る
数ヶ月後、ようやく貞祇は琴の元へと帰ることができた。彼は傷を癒す間、何度も思い出した。妹が自分を待ち続けていること、その深い愛情に支えられて生きてきたことを。
家に戻った貞祇を見た琴は、泣きながら彼を抱きしめる。
「兄さん…無事でよかった」
「すまなかった。長い間待たせたな」
貞祇はその言葉を口にしながらも、心の中で誓った。これからは妹のためにも、自分を大切にし、家族との時間を無駄にしないようにしよう、と。
そして、ふたりはこれからの平穏な日々を約束するかのように、静かな時間を共に過ごしながら、未来を見つめていた。
---
貞祇の青春編では、戦争という過酷な環境の中で、家族を守るために命を懸ける姿と、姉弟の深い絆が描かれています。彼の成長や決断、そして妹との再会が物語を通じて感動的に描かれ、兄妹の絆が何よりの支えとなっていることが強調されます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます