双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける

@7281mo-mu

1章 迷宮時代の幕開け

第1話 非日常は突然に

⦅我が■よ、本当に行うのですか?そんなことをすれば⦆

⦅私の決定に不満を持つか⦆

⦅!! い、いえ、貴方様の決定に背く意志等ございません!しかし、私は不安なのです。これからの人間達が歩む未来が⦆

⦅あぁ、そうだな、下手をすれば人間は絶滅するかもしれない。だが、今はこうするしかないのだ⦆

⦅・・・我ら一同、貴方様の決定に従います。我等が■よ⦆





 ジブン・・・北豊(ほくほう)天規(あまみ)は、何の取り柄も無い人間だと思う。

 人格者の両親の元に生まれ、今年になって17になるジブンだが、現時点で人に誇れる特技なんてものは無い。

 学力は、幼い頃は学校の先生をやっていた両親から教わり、上位の部類に入っていたが、中学生に上がると、数学では証明問題などというよく解らん問題や、本当に日本人が理解できるのか?というような英語が始まり、その他大勢に埋もれた。

 さすがに、今は英語の文法は理解できるようになったが。


 少し前までは足の速さには自信があったのだが、それもまた高校生となってから大きな大会に出るようになり、自分より優れた者を見たことと、自分の成長が打ち止めになったことを悟り、僅かな自尊心は紙切れのように吹き飛んだ。


 そんなジブンが他の人と違う点を挙げるとしたら、それは・・・


「どうした、ボーっとして?信号青になったけど」


 ジブンには、双子の兄がいる事だ。


 ・

 ・

 ・


 現在、高校の授業が早く終わって、双子の兄である、北豊蒼規(あおき)と一緒に帰宅しているところだ。

 ジブンと兄は、学校に友達といえるほどの仲の良い人物などおらず、休み時間では常に一人で過ごしていた。

 そんな他人から見たら寂しいと思われるだろう学校生活を送っている。

 だが、ジブン達はその生活に満足していた。

 己の趣味嗜好を相手が興味を持ってもらえるのかわからない。

 それなら、同じ趣味嗜好を持った双子の兄弟と共に過ごせばいいではないか。

 そんな、ボッチ上等の考えを持っていた。


 だが、現在の自分たちは高校2年生。

 来年には卒業し、進学か就職のどちらかの選択を迫られる時期となった。

 進路を考えるのは正直面倒だが、将来にかかわることなので真剣に考えなければならない。

 でも、まだまだ先の事なので、今は娯楽小説を楽しませて欲しい。


「あのゲームに新しいキャラ出たらしいよ」

「どんなキャラ?」

「なんか双子のキャラらしい」

「ジブン達と同じか。・・・性能は?」

「連携を重視するタイプらしいよ。属性も切り替えられるらしいし、環境が変わるとか言われてる」


 ジブン達が話しているのは、最近始めたソシャゲのゲームの事だ。

 と言っても、ソシャゲの中ではマイナーの部類だ。

 だけど、誰にも通じない話題だとしても、2人でそんな他愛の無い話をしている時間が好きだ

 だから、そんな時間がもっと続けばいいのに・・・。

 そう、思ってしまうのは変だろうか?


「天規は、このキャラのガチャは引く?」

「ん~、どうだろ。・・・ん?」


 蒼規の質問に対して、ガチャを引くためのアイテムが少ないことを思い出しながら、引くかどうか悩んでいた。

 そして、課金すべきか我慢すべきか検討し始めながら、気晴らしのために空を見上げた。

 だからこそ、ジブンは気が付くことができた。

 上空で起こっている異変に———




「・・・虹?」


 空に、円を象った虹色が浮かんでいた。


「あっ、虹だ。しかも、見たことない形をしてるな」

「ホントだ。写真撮る?」

「別に、そこまでしなくてもいいでしょ」


 だけど、雨が降っていなかったのになぜ虹が?

 そんな疑問が浮かぶ中、目の錯覚か、空に架かった虹が、少しずつジブン達に近づいているように感じた。

 ・・・いや、あれは本当に虹か?


「アレって、虹なのか?」

「やっぱり珍しいから、1枚だけ写真撮ろっと」


 蒼規が呑気に写真を撮ろうとスマホを構えているが、何だか嫌な予感と言うか、とんでもないことが起こりそうな気がする。

 そんなジブンの思いとは裏腹に、どんどん大きくなる虹。

 ・・・いや、これは虹色の何かが近づいてきてる!?


 ジブンが蒼規の手を引いて逃げ出そうとしたが間に合わず、球体状となった虹が自分達に向かって落ちてきた。

 それと同時に、視界が眩い虹色の光で覆われる。


「「目があ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛―!?」」


 突然、自分の目に襲い掛かってきた強い光によって、目が、目が物凄く痛い!?

 目の痛みで悶えながらも、横から聞こえた蒼規の声を聞いて、蒼規もこの謎現象に襲われていることがわかる。

 そんな、目の開けられない自分達に対して追撃をするかのように、今度は体の中をいじくられるような痛みが全身を襲う。


「「あばばばばば・・・!?」」


 激痛で体の感覚が良く解らなくなった。

 五感もいかれたのか、自分の声や周りの音を拾えない。

 後、世界は光に包まれたままなので、周りの様子が全く見えない。

 そんな無い無い尽くしの状態の中で、さらに奇妙な感覚に襲われた。

 まるで、体の中から何かが抜けると、何かが入って来るような感覚。

『やべっ、間違えた』という、中性的な声が幻聴として聞こえた。

 そんな初めての感覚を、ちょっとだけ新鮮に思って楽しく感じた自分が恨めしい。


 しばらくの間、2人で歩道上を痛みでのたうち回っていると、今度は背中に激痛が走った。


「あう゛ぇ!?」

「おう゛ぇ!?」


 まるで、背中に足が生えたような、先程よりもさらに奇妙な感覚。

 もはや自分自身の体に何が起こっているのかがわからない!?

 そのままジブン達は、その場で痛みにのたうち回っていたのだった。


 ・・・それから、しばらく経っただろうか。

 やっと、体の激痛がマシになってきた。

 未だに体の節々から痛みを訴えているが、何とか起き上がることができた。

 なぜか、体の部位によっては軽くなったり重くなっていたりするし、特に背中はキャンプ用の荷物を背負ったように重い。


「だ、大丈夫だったか、蒼規・・・?」


 現状の把握よりも、さっき凄い声を出していた蒼規が無事か気になったので声をかけた。

 だが、耳がさっきの激痛でイカレタのか、自分の声とは思えないような綺麗な声が自分の口から出たように聞こえた。

 さっきの痛みで耳がイカレタのか?


「だ、大丈夫・・・⁉」


 返事として帰ってきたのは、ジブンと同じく綺麗ソプラノボイスだった。

 ジブンは、思わず声のした方を見た。


 そこには、物凄い美少女がいた。

 黒のメッシュが入った白い髪と、灰色の目をした少女。

 髪型はウルフカットと呼ばれるモノで、目尻が少し垂れ下がっているので優しそうな印象を持つが、顔つきはそこらのアイドルとは比べ物にならない程に整っている。。

 そして、額には緑色をしたアルファベットのFの入れ墨が入っている。


 正直、自分は3次元の女性の美人というモノがよくわからなかった。

 テレビに出てくるアイドルを見ても心が動くことが無いし、美しいや可愛いと思ったことなど一度も無い。

 2次元の美少女には、可愛いと感じるのだが・・・。

 そんな自分は、今日初めて実在する人物の姿を美しいと思った。

 このレベルの美少女など、テレビでも見たことがない。

 まるで、アニメやゲームの世界から飛び出してきたこのような美しい少女。

 彼女にこそ、女神のように美しいとかのアニメに出てくるような褒め言葉があるのだとすら感じさせる。

 ただ、それよりも注意すべき点があった。


 翼だ。

 彼女の背中には、純白の翼が生えていたのだ。

 その姿はまさに、ラノベやアニメで出てくるような天使と言っても過言ではないだろう。

 そんな翼付きの白髪美少女は、なぜかこちらを呆然と見ていた。

 そして、ジブンにこう言った。


「・・・天規か?」


 ・・・⁉

 慌ててジブンの足元に落ちていた自身のスマホを拾い、自撮り機能を使う。

 あ、違うアプリ開いた。えっと、これは違う・・・。あー、ここだここだ、ポチッと・・・。


 ・・・・・・。


 そこには、目の前の美少女と瓜二つの顔立ちをした美少女の顔が写っていた。

 だが、同じ髪型だが前よりツヤのある黒色に白のメッシュという、目の前の推定兄との相違点があった。

 目尻が少し上がり気味で、人によってはキツイ性格であるという印象を持ちそうだ。

 さらに、背中には黒い翼のようなものが・・・。


「なるほど、お前が蒼規か」

「そうだね。やっぱり、そっちが天規と」

「そうだぞ。凄い変化だな」

「「・・・」」


 ・・・どうやら、自分たちは女体化&異形化したらしい。


 ・

 ・

 ・


「「ということで、体が大変なことになり」ました」

「よく普通に帰ってこれたな、あなた達」


 —————————


 私、@7281mo-muの2作目です!

 前まで書いていた「何故か私が幼馴染のハーレムメンバーであると勘違いされている」と並行して投稿していこうと考えています。

 どうか、これからも私の先品をよろしくお願いします。


 追記:「面白い」、「これからの展開に期待できそう」、「長い目で見てあげよう」と思った方は、どうか☆と♡ボタンを押してくださると幸いです。

 誤字とかあれば、どんどん知らせてください。


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