ハズレ武器を授かった俺が、隠されたぶっ壊れ性能を覚醒させて英雄に成り上がるまで~俺だけ成長する魔剣で最底辺から最強へ~

むらくも航

第1話 あの日の約束

 『大きくなったら一緒に騎士になろう』


 幼い頃、俺は幼馴染の彼女と二人で誓った。


 それから十年。

 今日、その行方を大きく決定づける儀式が行われる──。





「……199、200!」


 まぶしい陽の下、俺──レグスは腕立て伏せをしていた。

 これは毎朝の日課だ。


「もーレグス、こんな日までトレーニング?」

「あ!」


 すると、目の前の教会から少女が出てくる。

 彼女は呆れながら声をかけてきた。


「今日ぐらいはおとなしくしてたら?」

「ごめんごめん、落ち着かなくて」


 彼女の名は『ラフィア』。


 毛先がくるりんとした、茶髪のショートカット。

 俺より少し小さい身長。

 十五歳にしては見た目は少し幼いけど、口調は強めだ。


「そろそろ出発するんだから、レグスも準備しなさいよね!」

「ははっ、わかったよ」


 ラフィアは俺の幼馴染で、共に教会でお世話になっている。

 二人で話していると、教会からシスターも出てきた。


「いよいよだねえ、レグス、ラフィア」

「うん!」

「ええ!」


 身寄りのない俺たちにとって、シスターは親のような存在だ。

 “家族”と言ってくれた日のことは、忘れもしない。


 でも、きっと今日でしばらくはお別れだ。

 

「あの約束、忘れてないわよね」

「もちろんだよ」


 俺とラフィアは、十年前に約束をしたから。


「「大きくなったら一緒に騎士になろう」」


 騎士とは、魔人と戦う者のこと。

 国家資格によって認められる職業だ。


 俺たちの故郷は、魔人によって焼かれた。

 そこで家族を失い、この村に逃げてきたんだ。

 

 でも、悲しんでいるだけじゃダメだと思った。

 俺たちのような人達を増やさないためにも、強くなって人々を守れるようになろうと誓ったんだ。


 そのためにも、今日の儀式についてずっとお祈りしてきた。


「【天啓てんけいの儀】、楽しみだね」

「うん」


 ──【天啓の儀】。

 成人である十五歳になると、人々が受ける儀式のこと。

 神殿に行くことで、天の女神様から“てん”を授かることができる。


 与えられた天器は、“才能”を示す。

 ランクが定められていて、その後の職業なども大きく決まる。

 もちろん例外はあるけど、やはり騎士向け・・・・の天器というのは存在する。


「俺は剣」

「わたしは魔導書」


 それが二人で願った天器。

 俺たちの“剣と魔法”で、魔人を倒す。

 そのための努力もしてきたつもりだ。


「いこう、ラフィア」

「ええ!」


 そうして、いよいよ【天啓の儀】が行われる。





「これより【天啓の儀】を開始する」


 神殿の中央で、神殿主さんが口を開いた。

 時間になり、早速儀式が始まるみたいだ。


「それでは諸君、祈りを捧げよ!」


 神殿主さんが天に手を掲げる。

 それに準じて、俺たち同世代のみんなは祈りを捧げた。

 すると、神殿の上から神々しい光が降り注ぐ。

 

 だけど、ふいに不可思議な声が聞こえる。


『──見つけた・・・・

「え?」

 

 美しく神聖な声だ。

 どこかで聞いたことがある気もする。

 でも、それ以上は聞こえなかった。


「──グス、レグス!」

「……!」

「もうレグスったら!」


 ラフィアの呼びかけにハッとする。

 慌てて目を開くと、ラフィアは不思議そうな顔を浮かべていた。


「もう、いつまで祈ってんのよ。みんなとっくに天器を確認しているわよ」

「え、あ……」


 ラフィアに言われて見渡すと、同世代のみんなは天器を掲げていた。


「見ろよ、このかっけー斧!」

「俺の短剣の方が良いもん!」

「私は杖よ!」


 天器は、自らの魂とひもづけられる。

 強く祈ることで、取り出したい時に具現化させられるんだ。

 でも、さっきの不思議な声は少し気になる。


「ラフィア、儀式中に何か声が聞こえなかった?」

「何も聞こえなかったわよ?」

「そっか……」


 ラフィアだけじゃなく、周りにもその話をしている者はいない。

 どうやら俺以外には聞こえなかったらしい。

 すると、ラフィアは俺を急かすように口にした。


「それより、レグスの天器は何だったのよ!」

「あ、そうだね」

「わたしはこれよ!」

「それは……!」


 ラフィアが両手を開くと、胸辺りから光が生まれる。

 そこに顕現けんげんしたのは──魔導書だった。


「【白き魔導書】って言うみたい。すごいのかしら」

「どうかな──」

「そこの君!」


 その瞬間、遠くから声が聞こえてくる。

 すぐさま駆けつけて来たのは、仮面を付けた大人の女性だ。

 女の人はラフィアの前で膝を付く。


「今、【白き魔導書】と言ったか?」

「は、はい」

「見せてもらうことはできるだろうか」

「良いですけど……」


 天器は魂に紐づくため、人から奪うことはできない。

 一定の距離が離れると、持ち主の元に返るんだ。

 そのため、ラフィアは素直に手渡した。


「すぐに鑑定を」

「はっ!」


 女の人は、部下の者に声をかける。

 レンズの天器を持った部下が鑑定をするようだ。

 すると、鑑定者さんは大きく目を見開いた。


「間違いありません! Sランク天器【白き魔導書】です!」

「「「……!」」」


 天器にはランクが定められている。

 ランクは、上から順にS~E。

 つまりラフィアの天器は、最上位・・・ランクの天器を引いたんだ。


「や、やった!」

「すごいよラフィア!」


 二人で祝い合っていると、隣で女の人が仮面を取る。


「「……!」」


 俺たちは思わずドキっとしてしまう。

 仮面の下から、すごく綺麗な人が出てきたからだ。

 この田舎の地にはとてもいない。


 サラサラの金髪を後ろにかきあげながら、女の人は頭を下げた。


「すまない申し遅れたな。私は王都にて、Sランク騎士団『おう』の団長を務めている、ミロスだ」

「「……!」」


 騎士団は騎士の集団。

 Sランク騎士団の『皇華』と言えば、俺たちでも知っている最上位騎士団だ。

 その名は、この辺境に地にまでとどろいている。


 でも、驚くべきことはまだ続いた。


「ラフィアと言ったか。その天器を見込んで、君を騎士団に招きたい」

「え!」


 なんとラフィアを勧誘してきたのだ。


「もちろん指南はしよう。戦闘の基本から実戦まで。報酬も一団員分を与える」

「……!」

「天器は言わば“才能”だ。君は騎士になれる才能を持っている」

「わ、わたしが……」


 騎士を目指すラフィアにとって、願ってもいないチャンスだ。

 断る理由はなかった。


「よろしくお願いします!」

「ありがとう。では早速──」

「あ、待ってください!」

「ん?」


 だけど、ラフィアは待ったをかけると、俺の方に手を向ける。


「彼の天器も鑑定してくれませんか!」

「ほう」

「彼はずっと私と過ごしてきました。きっとすごいものを授かっているはずです!」

「うむ、よかろう」


 ミロスさんに相槌あいづちを打たれ、俺は天器を出そうとする。

 天器は強く祈れば体から顕現するはず。

 でも、中々現れない。


「レグス……?」

「う、うおおっ!」


 力を振り絞り、光が俺の胸に前に集まる。

 ようやく天器が出現するみたいだ。


 そうして、なんとか出てきたのは──平凡な剣。


「鑑定を」

「……は、はい」


 鑑定者さんは顔をしかめながら、俺の天器を覗く。

 その後に発せられたのは、なんとも残酷な言葉だった。


「……【無垢むくの剣】。ランク無し・・です」

「え?」





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