デメリット持ちバッファーを集めて最強へと至る、何故か世間からは怪物と呼ばれるように

@NEET0Tk

第1話

「きゃあああああああああああ化け物よぉおおおお」


 道を歩けば黄色い声援。


「た、頼む殺さないでくれ」


 人々には信頼され


「おぉ神よ、彼のものにどうか安らかな死を」


 いつも元気に生きている。


 それこそが俺こと名城ユウキ。


 世界に10人もいないとされるSランク冒険者の1人にて、最強の冒険者パーティーのリーダーである。


 正に勝ち組、俺こそが世界の頂点である!!


 ……さて


「なぜこんなことになった!!」

「どうかしましたか?」


 そんな俺を見て笑顔で語りかける美少女。


 その笑顔を見た俺は何故自分がこんな事になったのかを改めて思い出すのだった。


◇◆◇◆


「モテたい。ちやほやされたい」


 そう思い立ち走り続けた俺は現状を整理する。


 まず俺の実力派Dランク冒険者。


 下がE、上がA、そして人外認定のSすげーきもいランク冒険者だ。


 そんな中で俺はD、だが駆け出しにしては早い方である。


 というのも俺には生まれ付き備わっている力があるのだ。


 それは痛覚遮断。


 今までの人生で痛みを感じたことがないのだ。


 一応苦労したこともある。


 一部の食べ物の味がわからなかったり、怪我をしても気づけないことだ。


 昔、崖から落ちた後、しばらくは気づかず過ごし家族に青あざが見つかるまで俺は普通に過ごしていたのだ。


 改めて調べると俺の腕は折れていたらしい。


 下手をしたら治療できなくなるところだったそうだ。


 痛みは危険信号とはよく言ったものである。


 まぁデメリットばかり語ったが当然恩恵もある。


 というか恩恵の方がデカい。


 痛みに強い、即ち戦いにおいて非常に便利なのだ。


 この特技を生かし冒険者となった俺はそこそこ活躍した。


 普通ならビビる場面でも臆さず攻めの視線を崩さないのは俺特有の強さと言えるだろう。


 だが痛みに強かろうと死ぬときは死ぬ。


 痛みの恐怖はなくとも死ぬ恐怖はあるのだ。


 もしこの死の恐怖に対抗することができれば俺はさらに一歩先の世界へ行けるだろう。


 まぁ死を乗り越えるなんてうまい話、あるわけないんだけどな。


「はぁ……モテてー」


 冒険者になればモテると思っていたが、俺は一般人よりは上等くらいの強さ。


 つよいやつを引き入れても俺よりそいつが目立てば意味がない。


 どこかに世間的には評価されないがとんでもないバフで俺を目立たせる神魔術師はいないだろうか。


「はっ、一体どんな奇跡が起きたらそんな奴に出会えるんだ」


 とりあえず小さなことから少しずつ始めるか。


 そう思い冒険者ギルドへと訪れると、何やら騒がしい様子だ。


「ヒイラ、お前にはこのパーティーから出て行ってもらう」


 それはこの街では有名なBランク冒険者の1人だった。


「お前の能力は無能すぎる」

「ですが」

「ですがもくそもあるか。お前のせいで僕らは全滅しかけたんだぞ」


 何事だと周囲から視線が集まる。


 俺も野次馬を潜り抜け最前列へと向かうと、なにやらイケメンが美少女をパーティーから追い出すようだった。


 勿体無い、あんな可愛い子俺なら無能だろうと仲間にするのに。


「私はこれからどうすれば」

「どうせお前の能力じゃ誰もパーティーには入れたがらん。引退でもして協会にでも行け。そこでもお払い箱だろうがな」


 協会、ということは彼女は白魔術師か。


 白魔術は人を癒したり毒物を分解する魔法のスペシャリストだ。


 骨折した俺の腕を直したのも白魔術師である。


 だいたいは協会に所属するが、こうして冒険者をしている白魔術師も少なくない。


 だが貴重なことも確か、美少女で白魔術師とかいう欲張りセットを追い出すなんて勿体ない話だ。


 こりゃスカウト合戦が始まるか?


 そう予想したがなぜか周囲は可哀想にという雰囲気だけで解散するようだ。


「どうしてみんな彼女に声をかけないんだ」


 気になった俺は近くの冒険者へと尋ねる。


「お前新人か?なんでって、そりゃ相手が黒魔術師のヒイラってんなら仕方ないだろ」

「黒魔術師?」


 黒魔術、それは呪いや生物の状態を操る魔術師のことである。


 よく暗殺などで使われるためあまりよい印象がない、といのが世間からの評価だ。


 別に俺は気にしないタイプだが、ある意味で蔑称とも呼ぶべき言葉ではある。


 だが


「彼女は白魔術師じゃないのか?」


 協会に黒魔術師は入れない。


 むしろ目があえば即殺しに来る勢いである。


「確かに白魔術師ではある。だがあいつのせいで精神が壊れちまった奴が大量にいるんだ」

「何をしたんだ?」

「俺も詳しくないがそろいもそろって生き地獄と言っていた。そしてもれなく全員冒険者は辞めちまった」


 生き地獄か。


 一見そこまで極悪非道には見えないが、人とは恐ろしい生き物だ。


 関わらないでおこう、そう決めた俺の目に映ったのは一粒の涙だった。


「……はぁ~~~~~~~~~」


 これを見逃せば一緒モテないぞ。


 俺の中の天使だか悪魔だかが笑ってそう答えた気がした。


「どうした、話でも聞いてやろうか」

「え?」


 涙を流した少女が振り返る。


 近くで見ると本当に顔がいい。


 逆に言えばこの見た目でも誰も声をかけなかった存在というわけだ。


「ごめんなさい、お見苦しいものを」

「いや別に気にしてないけどさ、周りのこと考えたら冒険者なんてやめた方がいいぜ。そんなに顔がいいなら受付嬢でもすればいい」

「どうしても、お金が必要なんです」

「あ……そのだな」

「ごめんなさい、身を売ることはできなくて」


 言いづらいことを察した彼女は先にこたえる。


 金が大量に必要、そうなったときに人が出せる手段は人を陥れるか命を担保にすることだ。


 話してる感じ悪い子には見えない。


 真っ当な手段で稼ぐには冒険者以外は不可能なわけだ。


「ごめんなさい、つまらない話をしてしまって」

「全くだ。飽き飽きして眠りそうになった」

「ご、ごめんなさい」

「あーあ、このままじゃ寝ちゃいそうだ。こういう時は体を動かすに限る、そう思わないか?」

「体……ですか?」

「どうなんだ?」

「そう……かもですね」

「共感を得られて何よりだ。それじゃあ一緒にどうだ?」


 俺はとある討伐依頼を見せる。


「元Bランクの人にとっては端金かもだが、投資先としては最高だと自負している」

「ちょ、ちょっと待ってください!!話についていけません!!」


 白魔術師は混乱している。


 回復職が一番最初にデバフを食らうパーティーは論外、それが冒険者の習わしだ。


 彼女は目を泳がせた後、逃げるように下を向く。


「でも私がいたら迷惑になります」

「そこは気にすんな。お互いものは試しだ。気に食わなければ切ればいい、それだけだろ?」


 冷たい言い方だが、これくらいアッサリした方が後草れがない。


 わざわざ公共の場でパーティーを追い出す、そういう行為は後々に響いたりするものだ。


「それなら」


 俺の提案に納得したのか、白魔術師は顔を上げた。


「ですがお願いします。怪我だけは絶対にしないでください」


 さすが白魔術師、心根が優しい限りだ。


 だが申し訳ないが怪我はする。


 俺の戦闘スタイルは肉を切らせ骨を断つ戦法なのだ。


 俺の戦い方は少し特殊なせいで今までパーティーは組んでこなかったが、お手並み拝見だな。


 黒魔術と呼ばれる白魔術師、一体どんなものなのだろうか。


 俺はどこかワクワクしながら依頼へと向かうのだった。

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