第41話『生徒会役員、動く』


「くっ……私としたことが」


 准也じゅんやたちとの戦いに敗れた狩生は、『影』のカードの力でかろうじて生徒会室へと逃げ戻っていた。


「おかえり。派手にやられたようだね」


 安堵の表情を浮かべながら扉に背を預ける狩生を、生徒会長の大神おおがみが薄い笑みを浮かべて出迎える。


 室内の明かりが消されていることもあって、狩生は大神が突然現れたような錯覚に陥る。


「狩生君、先走りすぎ。完全に引き際を間違えてた」


「そうよ~。『剣』のマグナカードまで取られちゃうなんて、踏んだり蹴ったりよね~」


 そんな大神の背後から顔を出したのは、同じ生徒会役員の天ヶ瀬あまがせ姉妹だ。


 妹の明香里あかりは呆れ顔をし、姉の美乃里みのりは心配顔をしていた。


「……返す言葉もありません。まさか、カードを奪われるとは」


「くすん。じゃあもう、『剣』のカードは使えないのね。あれ、便利だったのに」


「おねーちゃんの場合、なんでもコピーできるんだからナイフでもなんでも好きに使えばいいのに」


「そういうわけにはいかないのよ~。マグナカード以外をコピーするのは疲れるし」


「私より魔力あるくせに、疲れるとか言わないでよ」


「まぁまぁ、二人ともケンカしないで」


 姉妹をなだめてから、大神は狩生へと向き直る。


「腕の怪我はそこまでひどくなさそうだけど、手持ちのマグナカードが減ったのは痛いね。狩生はしばらくアルスマグナとしての活動は控えること。いいかい?」


 大神からどこか冷めた目で言われ、狩生は黙って頷く。


「でも、狩生君がそこまで功を焦るなんて意外」


「本当よね~。もしかして狩生くん、マグナカードに魅入られちゃったんじゃないの~?」


「そ、そんなはずはないと思いますが」


「わからないよ。『剣』のカードは好戦的だから」


「怖いわね~。私も闇落ちしないように気をつけるわ~」


 狩生を憐れむように美乃里が言い、大神が悪戯っぽい笑みを浮かべながら会話に加わる。


 生徒会役員同士、いつものやり取りだった。


「ところで、さっきからずっとこっちを見てるのは誰かしら~?」


 そんな矢先、美乃里が生徒会室の入口に視線を送りながら言う。


「ああ……ほら、この前話してた、書記候補の子さ。ほら、入っておいで」


 その様子を見た大神は思い出したように言い、扉に向けて手招きをする。


 ややあって、小柄な少女が生徒会室に入ってきた。


 ツインテールに結われた髪は銀色で、窓から差し込む月明かりを受けて淡く輝いている。


「は、初めまして。立石 瑠夏たていし るかです。このたび、大神さんから生徒会書記に推薦していただきました。よ、よろしくお願いします」


 その銀髪以上に特徴的な真紅の瞳を生徒会役員たちに向けたあと、瑠夏と名乗った少女は深々と一礼した。


「書記……ですか?」


「そう。さすがに姫島ひめしまさんは勧誘できなかったから、その代わりさ。しばらく狩生も動けないし、ちょうどいい頃合いかなって」


「何にしても、可愛らしい子じゃない。よろしくね~」


「わわっ……!?」


 大神がそう説明する中、可愛い女の子が好物である美乃里はさっそく瑠夏に抱きついた。


「美乃里ちゃん、彼女、えげつないカードを持ってるから気をつけてね。あまり怖がらせると、食べられちゃうかも」


「そ、そうなのね~。さすがに食べられたくはないわ~」


 大神が冗談とも本気ともつかない発言をすると、美乃里は恐怖を感じたのか、速やかに瑠夏を開放した。


「その校章……彼女、二年生ですか。よく生徒会に勧誘できましたね」


「そこはほら、生徒会長権限ってやつだよ」


 茶化すように大神が言うも、その場にいる誰も信じていない様子だった。


 その間にも、明香里は瑠夏に近づき、その顔をじっと見つめる。


「な、何か?」


「私、一度見た人の顔は忘れないんだけどさ、君は見たことないなぁ」


「それはそうだよ。彼女、最近引っ越してきたんだ。編入手続きも終わったし、数日中に二年B組に転入する手筈になっている」


 いぶかしげな顔をする明香里に、大神がそう伝える。


「二年B組……敷戸しきどたちのクラスではないですか」


「そうだよ。向こうも新しいメンバーを加えたみたいだし、こっちも動かないとね」


 狩生の言葉に反応したあと、大神は窓の外に視線を送り、不敵な笑みを浮かべていた。

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