第6話 彩葉
「おはよう! 今朝は寒いね」
モコモコのベージュのマフラーに白のダッフルコートを羽織った
「彩葉、今日、カラオケいける?」
「うん。もちろん。任せて!」
女子たちからの誘いも多い。なるべく断らないようにしていた。授業が始まるとふっと小さなため息をついた。好意を寄せる学級委員の
今日も後ろから眺めて終わりなんだろうなと諦めていた。休み時間にトイレに席を立つと廊下で理玖と鉢合わせした。
「彩葉、昨日の回収ノート出し忘れてたぞ」
「マジ? 何の教科だっけ」
「数学」
「わかった。後で持っていくよ」
ふと、理玖は彩葉の頭をポンポン撫でた。
「あんま、無理すんなよ?」
彩葉の心臓が、激しく動き出した。
「え?」
思ってもない出来事に頬をつねったが、痛みがある。現実だ。
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