リョウ、合戦に目覚める

 この世界の花形は、なんといっても合戦である。「いや、違う」という人もいようが、筆者は対電脳戦よりも対人戦を好んでいた。それができるのが合戦であった。そもそも戦国世界に合戦がなくては話にならないと思うが。

 ただし、合戦のメインは対電脳戦であった。以下、それを説明する。


 リョウたち「もののふ」は、生を受けるとまずどこかの大名家に仕官する。大名家は領国を持っており、軍資金などの条件が整うと隣の大名家に合戦を仕掛けることができる。それで例えば斎藤vs織田などという合戦が発生する。これがいったん始まると一週間続き、リョウたちはいつでも好きなときに参陣できた。


 合戦場に入ると、敵味方とも3×3で九つの要害(先鋒、中備、後詰の、左、中、右)があり、それぞれ囲いの中に武将が守っていた。確か、主将と副将がいたと思う。

 これらの要害武将は全て電脳のパーティである。それを「もののふ」のパーティが倒すことで、陣を奪うことができる。そうすると、まとまった得点(戦果)がもらえ、勝利に近づいていく。ちなみに落ちた敵の要害には味方の武将が入る。

 つまり、この武将攻略のパーティが合戦の花形なわけだ。

 そして、後詰の奥には本陣があり、柵の中に四天王、軍師、大名(たとえば織田信長)がいた。もちろん、これらもパーティ戦をやって攻略することができる。

 難易度は大名が最も高く、次いで軍師、四天王、後詰から先鋒の順である。

 大名はときどき討ち取られていたが、それをもって勢力の滅亡にはならなかったと思う。


 さて、これらの要害の周りでは、足軽などの雑魚NPCが多数警戒していた。

 敵の武将と戦闘するには、要害までパーティが走っていき、中の武将を叩く必要がある。その途中で妨害してくるのがこの雑魚NPCだが、そこにさらに、ソロやパーティの「もののふ」が待ち構えていた。

 つまりこれらを適切に排除し、要害を攻略するのが合戦におけるメインの目的であった。


 ちなみに対人戦は、抜け道というごく特殊なエリアを除き、合戦場でしかできなかった。対人戦好きな筆者の性格のため、リョウはこの合戦場に入り浸ることになった。

 合戦場にはレベル二〇から行けるが、リョウは二五ぐらいからほぼ入り浸っていたと思う。低レベルで狩れるのは足軽などの雑魚に限られるが、薬師には「転生」という重要な役目があった。

 合戦場で誰かが死ぬと幽霊になるが、ほっておくと合戦場の外に戻ってしまう。薬師は転生を掛けることで、幽霊をその場で生き返らせることができる。

 なので、ひとしきり攻防があった後、

「敵右前、転生二名たのむ~」などと誰かが叫ぶと

「は~い、すぐにまいりま~す」と駆けつけるわけだ。

 ちなみに雑魚NPCを倒すとたまにお宝が出たりして、合戦場には美味しい要素もあった。


 ところでだが、リョウはかなり長い期間を浪人として過ごした。

 実は、最初に所属した大名家では、合戦をあまり起こさなかった。リョウはそれがもの足りず、出奔して浪人になった。浪人の最大のメリットは、どこの合戦にも助っ人として行けることである。それで、あちこちの合戦に参陣し、転生や雑魚狩りをやっていた。

 フィールドやダンジョン(ほとんど行かず)での狩りは所属に関係ないので、誰とどこにでも行ける。そちらで貫を稼ぎ、合戦場に行く装備を整えるという日常だった。


 レベルが四〇を超えてくると、華の武将(攻略)パーティに誘ってもらえるようになる。脳筋薬師でもだ(もちろん、装備はそれなりの高付与が必要だが)。いずれにせよ、この辺からが本番であった。

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