風当たりの強い探索者は引退したい

遊佐 浮幽

人間は人間らしく、そして人間であれ

プロローグ

254:名無しの人

それで、なんの話だっけ?


255:名無しの人

シムエルちゃんの配信に乱入してイレギュラーから助けた底辺配信者の話


256:名無しの人

アーカイブ見たけど、信じられねぇ。

なんで物理無効のアーマーオーガを剣で斬れるんだよ。

ヤラセとかCGとかの方がまだ納得できる。

リアルタイムでの配信中だから現実なんだろうけど。


257:名無しの人

もしかして、無効系の異能でも持っているとか?


258:名無しの人

まじで!?アメリカのソラス様と同じ異能を!?


259:名無しの人

いや、違うと思う。

ソラス様はフィールドのバフ、デバフの効果も無効にできる。

だけど、あの少年は物理無効は無効にできていたが、フィールド効果の視界暗転は受けてたはずだ。暗視ポーションを飲んでたから間違いない。


260:名無しの人

つまり、ソラス様の能力の下位互換ってこと?

それでもヤバくね?


261:名無しの人

助けられたシムエルちゃん。顔真っ赤にしてたな。

あの少年に惚れたか?


262:名無しの人

掲示板主にBANされました。


263:名無しの人

そりゃあ、殺されそうなところを助けられたんだ。

惚れるだろ。(年齢=彼女なしの俺氏)


264:名無しの人

掲示板主にBANされました。


265:名無しの人

→263

童貞乙w


266:名無しの人

→263

ほら、涙拭けよ。


267:名無しの人

→263

ちな、俺は昨日フラれた。


268:名無しの人

童貞ちゃうわ!!結婚もしてるし子供もいる。


269:名無しの人

→268

いやいやいやwそんな嘘はいいってw


270:名無しの人

→268

彼女いなかったんだろ?なのに結婚できるわけw


271:名無しの人

・・・同僚に合コンに連れて行かれて、酒で意識失って、目が覚めたらホテルで喰われてた。

後日、一発で命中してたことが判明。そのまま結婚した。

だから彼女はできなかった。


272:名無しの人

いや、托卵とか?


273:名無しの人

→272

流石に疑わざるを得ないから子供が生まれた時に嫁に話して遺伝子鑑定をした。

俺が父親だった。

疑った罰ってことで喰われた。


274:名無しの人

いや、そもそもなんで結婚したん?

やってること普通に犯罪やろ?


275:名無しの人

・・・その、可愛かったから、つい


276:名無しの人

→275

○ね。


277:名無しの人

掲示板主にBANされました。


278:1

→277

いい加減ウザいからBANするわ。

275関連の連中も、それ以上ここでその話するならBANするぞ。

ここは話題の探索者についての掲示板だぞ


279:名無しの人

掲示板主にBANされました。


280:名無しの人

→279

おもしろい


281:名無しの人

話は戻るけど、あの少年誰だったん?

底辺配信者って言ってるけど。


282:名無しの人

2年前からやってて登録者0人らしい。

アーカイブが昨日ようやく見れるようになった。


283:名無しの人

そんなことある?


284:名無しの人

→283

シムエルちゃんの方のアーカイブで言ってたけど、設定ミスっててプライベート配信になってたらしい。

そりゃ誰も見ねぇよ。動画ねぇもん。


285:名無しの人

噂だけど、あの少年が実は日本で1人しかいないSS級なんじゃないかって言われてる。

プライベート配信になっていたのも、政府が存在を隠したかったからって言われてる。


286:名無しの人

マジで!?


287:名無しの人

→285

そりゃあ、あんなの見せられたら海外からスカウトされそうだしな。


288:名無しの人

それに比べて、虚言は。


289:名無しの人

嘘つきがどうした?


290:名無しの人

知ってるか?アイツ、依頼で下層の魔物の素材を納品したらしいぞ。

どっかで買ったものをよ。


291:名無しの人

アイツはいらん。辞めちまえ。


292:名無しの人

配信もしない。噂についての言明もしない。

つまり本当のことなんだろ。

嘘つきだけどw









「というわけで、民衆の総意らしいから辞めていい?」

「辞めないでくださいお願いします!!」


目の前で俺の2倍以上の年齢の男が床に座り、頭と手の平を床につけている。

そう、土下座だ。

この国のダンジョン関連のことを取り扱っている迷宮省の迷宮大臣の男が、目の前でだ。


「やめてくださいよ。こんな事情を知らない人から見られたらか弱い年配の男性をイジメてるように見られるでしょ?僕はただ辞めたいだけなんだよ。病める時が辞める時。なんてことあるでしょ?大丈夫だって。日本で、唯一の、SS級の、少年がいるみたいだからさ」

「その掲示板を建てた人物を特定して消します。だから、だから」

「そんなことしなくていいよ。だって政府やギルドが動いてくれて僕の噂を払拭しようとしてくれたけど効果なかったでしょ?だからそんな無駄なことしなくていいよ」

「海外に活動拠点を移してもらっても構いません。支援もします。ですが、せめて探索者は」


辞めるよ?全然辞める。

海外にも僕の噂が広がっていることくらい知ってるんだよ?

僕が表向きにはA級ってことになってるからモンスターを倒しても、人や探索者を助けても当たり前なんでしょ?

それなのに悪口だけは言う。助ける価値、ある?


「というわけで、支援もいらないし海外にも行く。よかったね。新しいSS級の誕生だ」

「誕生させないでください!!あんなガキに虚言様のような活躍ができるわけないですよ!!虚言様が日本で探索者を辞めてしまったら、日本はおしまいだ」

「そんなこと言われてもねぇ」


まあ、僕が辞めたらそれだけでアメリカからの支援がかなり減少する。表向きA級、本当はそれ以上の僕が辞めたと知ったら、前例があるからと彼女も辞めるだろうからね。なんなら損害も請求されるかもしれない。世界にたった2人しかいないSS級が2人とも引退し、その原因となったのが日本だって知られたらさ。

あ、虚言って言われてるけど、それは悪口ではなく、A級以上は異能に関する二つ名が付けられることになっている。それで僕がそう呼ぶように言っただけなのだ。


「しかたない、探索者は続けるよ。でも、休みの日は増やしてね。なんか他のS級でも解決できるような依頼まで回ってきてるからさ・・・わかるよね?」

「は、はい。言いつけておきます」

「うん。よろしく」


そう言って僕は部屋から出る。


さてと、寝るか。

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