参上8.死んだ後にナイフ
===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
南部[江角]総子(ふさこ)・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。
指原ヘレン ・・・ EITO大阪支部メンバー。
愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。通信担当。
白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。資材・事務担当。
芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。
幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。
花菱所員・・・元大阪阿倍野署の刑事。今は南部興信所所員。
友田知子・・・南部家の家政婦。
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= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
午前10時。総子のマンション。
社会保険事務所作戦の翌日である。夜中にNew tubeにアップロードされた動画が、早朝から話題になっていた。
「どアホ!」大前の怒鳴る声が、狭い部屋に鳴り響いた。
「お前なんか妹でも何でもない。縁切りや!」「兄ちゃんのアホ!ホンマの兄ちゃんみたいに慕ってたのに。」「そやから、お前の教育がなってないから、ヘレンが単独行動したんやろが。」
2人の会話に、割り込んだ者がいた。ぎんだった。
「私のせいや。私が、大総長に、いや、チーフに心配かけんように教育したら良かったんや。コマンダー。殴って下さい、私を。」
見ていた、幸田が言った。「イマイチやけどなあ、まあ、今日は、このくらいで負けといたるわ。」
エレベーターから上がってきた、二美が三美に言った。
「吉村新喜劇、終った?」「一応。」二美がニヤニヤ笑った。
「台本はデキが悪いけど、役者は一流よ。」横から一美が言った。
「やっぱり、よう似てるなあ。」三姉妹が並ぶと、綺麗な人形三体のようだ。花菱が言う通り、よく似ている。三つ子だから。
「ヘレン。コマンダーから聞いたでしょ。EITOエンジェルスはクビだけど、私の会社で働きなさい。私たちの父はアメリカ人なのよ。それも、子供の頃、イジメの原因の一つだった。」
三美の言葉に、ヘレンは三美に抱きついた。「あんな動画が出たら、表歩けないからね。当面は、このオフィス・ウィズ・マンションで暮らして、働くの。総子には、秘密のエレベーター使えば、いつでも逢いに来られる。他のメンバーに逢いたい時は、総子の部屋に来て貰いなさい。」
「当面は2軍と思っとけばいい。分かったな、ヘレン。」大前は優しくヘレンの頭を撫でた。
「ああ、さっき、伝子さんにも連絡しといたで、妹。」「おおきに。兄ちゃん。」
「あ。花ヤン、泣いてんのか?新喜劇やで。」「新喜劇でも、笑ったり泣いたりしますやんか。」幸田の言葉に泣きながら花菱は抗議した。
電話が突然、鳴った。南部が出ると、幸田からだった。
「ああ、幸田か。何?殺人事件?そら、警察の管轄やろ。え?闇頭巾?大前さん。」
大前が電話を替わった。暫く話していたが、受話器を南部に返して、皆に言った。
「芦原橋で殺しや。幸田さんと新人が、浮気調査の相手の女のヤサに、依頼者の夫が入ったのを見届けて20分後に訪ねたら、依頼者の夫と、相手の女が心中していた。いや、心中に見せかけて殺されていた。女のパソコンが起動したままになってて、幸田がショートカットをクリックしたら、闇頭巾の運営しているようなサイトに繋がった。それで、警察にも連絡したが、EITOにも連絡、ちゅうことや。幸田の見立てでは、死んだ後にナイフを握らされているそうや。短い時間に殺し屋の忍者が訪問した訳やな。」
「兄ちゃん、幸田達は見張ってたんやろ?」「ちょっと入り組んでるが、隣の文化住宅から、乗り移るのは簡単やそうや。裏口、先に見ておけば良かった、って悔やんでたけど、死んだらどうしようもないわな。」
「大前の言葉に、南部興信所のチョンボや。大前さん、済まん。」南部は土下座した。
「そんなんせんといて。今日は、ヘレンの新しい門出や。一美、情報、頼むで。」
「了解。ああ。コマンダー。囮作戦するんなら、私の部屋使って。」
一美は大前に頷くと、エレベーターに急いだ。総子の部屋からは、地下の駐車場に直行出来る。
「よし、私は社員に必要なモノを用意させるから、コマンダー。二美と横ヤン、横山警部補で囮作戦して。一美にネットのサイトに囮の申し込みをさせるわ。早くしないと、サイトが閉じられてしまうわ。そろそろ、友田が来る頃ね。」
そう言って、三美は玄関ドアから出て行った。
「じゃ、私はみんなを支部まで送るわ。」二美が言った。
「えと・・・コマンダーって誰やった?」と、大前が言うと、皆が大前を指さした。
「流石、芦屋三姉妹やな。言わんでも、大前さんの『心』を読んで、もう作戦実行や。」と、大袈裟に南部は言った。
あまり納得が行かない大前だったが、順にエレベーターに乗り、降りた。5人乗りのエレベーターなので、2往復で地下駐車場に降りることが出来る。
大前達が降りた後、知子はやって来た。「お昼はチャーハンでいいかしら?」
午後2時。一美のアパート。
三美の会社の社員が、忙しく立ち回っている。盗聴装置や非常警報装置を取り付ける為である。
横山は、落ち着かない様子でウロウロしている。
「大ジョブかなあ。」「何が?囮作戦?それとも、私の誘惑に負けるかも、とか。」
「え?」「社員が帰ったら、好きにしていいのよ、かりそめでも、夫婦なんだから。」と、横山の耳元で二美は言った。
「え?」二美はケラケラと笑った。「生中継であちこち放送されるのを覚悟出来るならね。」「イケズやなあ、二美ちゃん。」と、横山は赤い顔になった。
FAXの音が聞こえたので、二美は取りに行った。
そして、横山に「これ、覚えておいて。細かいこと覚えなくても、アドリブでしゃべってくれたら、合せるわ。」とFAXを渡した。
「ああ、台本ですか。もう出来た?」「ひな型があるのよ。サンプルね。」
続いて、二美のスマホにメールが届いた。
「横ヤン。明日の午後2時よ、敵が来るのは。今夜は帰っていいわ。まあ、泊まってもいいけど。装置切って。」
「堪忍や。来年からホワイトデー、忘れんようにするさかい、堪忍や。」
今日はホワイトデー。横山は、三姉妹とEITOエンジェルスからm義理チョコを貰っている。今朝、一美に代表で渡す積もりだったが、買いそびれてしまっていた。
翌日。午後2時。一美のアパート。
横山は1時間前に来て、スタンバイしていた。
窓の外をコンコンと叩く音がした。忍者の格好をしている。
二美は、窓を開けた。忍者は入って来た。「お前達か。殺して欲しいと申し込んだのは。」
「はい。この子と一緒になりたいと思っても、女房が離婚してくれへんのです。いっそ心中しようかって言ってたけど、自分らでは心中する根性がないから。すんませんけど、助けて下さい。」
「『老いらくの恋』って奴か。女房は鬼ババアだな。よし、助けてやる。金は用意できたか。」「はい。」と、二美は伏し目で応え、封筒を差し出した。
忍者は、札束を数え、「よし。」と言って、ナイフを二美にかざした。
「あんた、こんな所で浮気してたのね!許さない!!」一美が入って来た。
驚いている忍者に、一美は横山に突進して体当たりする振りをして、忍者に手錠をかけた。
「どこの忍者か知らないけど、殺人未遂及び公務執行妨害で逮捕する!」
忍者の男は、腰を抜かした。
午後4時。EITO大阪支部。
会議室に集まっているEITOメンバーと三美。
「その男ね、部屋を出るとき、『どうも変だと思った。このオッサンには不釣り合いだから。』って捨て台詞言ったそうよ。流石の横ヤンも頭に来て、お尻蹴ったらしいわ。」よ。三美は笑った。
その時、いずみが、駆け込んで来た。「コマンダー。東京本部から通信です。」
大前は、隣の作戦室に移動した。「大前君。大変なことになった。芦屋警部達が護送中のパトカーが追突された。パトカーに煽り運転とは信じがたい光景だ。幸い、東京から行ったオスプレイが近くまで来ていた。DDバッジが押されたので、筒井がホバーバイクで降りて、追走車を攻撃、追走車は間もなくガードレールにぶつかり、止まった。すぐに筒井は救急車を呼んだが、運転していた芦屋二曹が重体だ。病院は北船場第二病院だそうだ。」
DDバッジとは、EITOの緊急通信用バッジである。ホバーバイクとは、EITOの『宙に浮くバイク』である。
「了解。ぎん。お前は残れ。総子はついて来い。後の者は自宅で待機。いずみ。南部さんにも連絡や。」大前は、指示した。
「了解しました。」いずみは即答し、南部に連絡を開始した。
「コマンダー。総子。裏のオスプレイは私が操縦するわ。」三美は言った。
「分かった。助かる。」
―完―
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