第48話 終焉

 沢山のロボがノロノロと近づいてくる。

「ゴフッ(立て、立つんだ。体力がもう無くても、根性で立つんだ。勝負に勝って、戦いに負ける訳にはいかない)」

 目は霞んで、数歩先は見えない。足は、生まれたての小鹿の様にプルプルと震え、立つのがやっとだ、刀を構え、ロボを迎え撃つ。

次の瞬間、一体のロボが一気に加速する。

「フゥー(向かい撃つぞ、一体ずつ相手をしろ)」

 しかし、ロボが射程圏内に入る直前立ち止まった。

「(何だ…?) 

 頭の中に疑問符が出てきた次の瞬間…

バン

 辺りにけたたましい銃声が木魂した。

「ウッ」

カラン カランッ

 足に衝撃が走り、それと同時に全身からから力が抜けて、刀を手放してしまう。

「ゴハァ、そうだったなコイツら銃使って攻撃してきたな……もう、勝ち目は無いか…」

 周りにいるロボが一歩前に出て、小銃を構える。

「ハハッ、相打ちかよ…」

 目をゆっくり閉じて、深呼吸をする。

「雪さん、すみません、約束守れなかったです……って、アレ?」

 銃声は鳴ったが、体に弾が当たった衝撃が来ない、目を開け、辺りを確認すると目の前に誰が立っていた。

「俺の可愛い後輩に手を出すな、ガラクタ共が!」

 辺りには弾丸が薄い青色の光を纏い、中に浮いている。

「荒木……さん?」

「髙田ぁ!今だ!」

「はいよ」

 地面が緑色に光り、地面から大量の竹が生えてきて、ロボのコアを貫いた。

「あの量を一瞬で、連係が凄く上手くできてる」

「天宮!大丈夫か?」

 青柳先輩が医療バックを持って近寄って来た。

「柳、後ろだ」

「ッ!」

 先輩が獣人化し、後ろ蹴りをするとほぼ同時、なんとそこにロボが飛び込んで来た。

ガンッ

 その蹴りの威力は凄まじく、鉄の塊を一瞬で粉砕した。

「小塚、サンキュ!」

「先輩……ゴフッ、僕の事は良いから、先に周りの敵を倒す事に専念して下さい」

「いやいや、お前もうすぐ出血死するぞ、安心しろ俺は同期を信じてる、今頃ヤン爺が向こうで暴れてるよ」

「え?」

 指をさされた方向に目をやると、巨大な象が樹々を薙ぎ倒しながら、敵を蹴散らしていた。

「出血が酷いな、誰と戦ったんだ?」

「雨宮……雨宮という剣豪です」

「雨宮?雨宮って?まさか…ちょっと我慢してくれ」

 先輩が徐に携帯電話を取り出し、雨宮という男について調べ始めた。

「雨宮、雨宮 誠、能力は……コモドオオトカゲ、マズイな」

「ゴフッ、ヘモトキシン(※血液が凝固するのを妨げる出血毒の一種)か、めんどくさい物を刀に仕込みやがって、クソが」

「止血剤が足りないな…高田!止血剤をくれ!」

「了解!」

 高田先輩が自分の医療ポーチから止血剤を取り出し、青柳先輩に投げ渡そうとする、しかし………

「ッ!高田、今渡すな!」

バンバンッ

 止血剤が撃ち落とされしまった。

「間に合わなかったか……荒木、領域は維持出来そうか?」

「ハアハア、持ってあと5分だ…」

「了解(やっぱり体力の消耗が激しいか、柳に先に周りの敵を倒して貰う?ダメだ、あの出血量を見るに、少しでも処置が遅れたら死ぬ、でも、もう止血剤が無い、どうしたら…)」

 その時、小塚の頭の中に一つの未来が見えた。

「フッ、今年の奴ら、なかなかガッツがあるじゃねぇか」

 丘の上から声が聞こえた。

「先輩方、援護させてもらいます!!」

 そこにいたのは、山小屋に立て籠もっていた、仲間達だった。

「永夢を死なせる訳にはいかない、守り切るぞ!」

「皆……ゴフッ(ダメだ、凄く寒い)」

 一筋の光が見えたが、僕の体はとうに限界を超えていた。

「先輩!どいて下さい!」

「河野、どういうつもりだ?」

「私の能力はInstant adhesive(瞬間接着剤)です。接着剤は止血剤の代用品になるので、私が代わりに止血します、先輩は戦闘に移って下さい」

「分かった、任せたぞ!」

 そこで、僕の意識は途切れた。



 





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