3-2 宵耀の想い
皇子が眠り続けてもう四日目。夜になってやって来た王宮の道士が三人。ひとりは主席道士である
天師府は纏う道士服の色で階級がひと目わかるようになっている。乙は下から二番目だが、天師府の道士たちの実力はかなり高いと聞く。しかし今回の任務に向いている階級かといえば微妙なところだ。
なにか言いたげな主席道士に対していつまでもつか見物····と、こんな時でなければ思うところだが。
もし万が一にも事が起こってしまったら、後々確実に面倒なことになるだろう。つまり今回に限っては面白がっている場合ではなく、どうにかうまく乗り切るのが正解と言えよう。
「
「私は
扉の前に立ち、右手で鞘を持ちそこに左手を重ねて正面で簡易的な拱手礼をした
「天師府所属の道士、
皇子の護衛官を前にまったく動じていない
「あの、大丈夫ですか? なんだか顔色が優れないようですが」
「····
「どうしてそう思うのですか?」
だからだろうか。一応、
だが実際のところこの簪については
「
花言葉。そういえば皇子の寝所の本棚の中に書物があった。なにかの手掛かりになるかもと記録したことを思い出す。
「追憶、君を忘れない、遠方にいる者を想う?」
「そうです。私もこの手のことには疎いのですが、
意味深なその言葉に、
『その
どうやらあの眠り皇子、もとい第三皇子と自分は、幼い頃に一緒に過ごしたことがある? らしい。それも八年前。どこにも存在しない思い出のひとつ。消えてしまった記憶の中に、それがあるというのだろうか。
『――――
なんとなく、だが。
もしそれが本当なのだとしたら、この
この簪を仮に第三皇子が自分に贈ったのだとして、それになんの意味があろうか。山でのほぼ自給自足の暮らしでお金に困ることもなかったので、たまたま手放さずにずっと自分の傍にあった簪。髪の毛を飾る簪はこれしか持っておらず、なんだかんだで愛着もあったのでいつも身に着けていた。
「····
「大変です!
そう言いかけたところで、寝所の扉が勢いよく開く。そこには青ざめた表情で立ち尽くし、両開きの扉を開けた姿勢のままこちらを見つめる道士の姿があった。
その者は
呼ばれたのはあくまでも
「魂魄がない? いったいどういうことですか⁉」
天師府で一番優秀な主席道士が気付かないわけがない。彼が報告した内容に対して、いつもは穏やかで平静な
すでにそれを知っていた
「あまり時間がありません。運よく王宮内のどこかにいれば助かる可能性はありますが、そうでなければ長くてもあと二日。その間に魂魄が戻らなければ、二度と目覚めることはないでしょう」
淡々とした声でそう断言した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます