1-11 夜明け
北区の門には衛兵がいたが、
そこから東の方へ進んで行き、やがて現れた立派な邸を前に、
立ち尽くしたままの
「おかえりなさい、
灯りが開かれた扉の向こう側からもれ、少しやつれた顔の女性が迎えてくれた。女性は
「まあ! 可愛いお嬢さんね!
「え? ああ、はい、おかまいなく、お母様」
「
「····いや、準備もなにも、」
第一印象の悲壮感のあるやつれた雰囲気とは真逆の、明るく元気でなんだか楽しそうな女性の態度に、
「あ、あの~、なにか勘違いをされておいででは? 私は、お嬢さんではないです」
「あら、てっきり年下のお嬢さんかと思ったのだけど、お姉さんの間違いだった?」
いや、そういう意味ではなく。
「
夜も遅いから、と空いている部屋で休ませてもらい、明け方近くに
「では、私は行きます。お布団、すごく気持ちよかったです。お母様も素敵な方でしたが、なによりも
眩しい太陽の光が青い空に差し込み、ふたりの間にちょうど光の帯のように何本ものびてきた。
「あんたには借りができた。なにかあれば、俺を頼ってくれてかまわない。これを、あんたにやる」
差し出すように右手をかざして、
「悪用したらすぐにわかるからな、」
「ふふ。その時は飛んできてくれますか?」
冗談だとはわかっていたが、なんだか嬉しくて。
「······
「私も····忘れたくないです」
はじめてだった。
あんな風に、
いや、憶えていないだけかもしれない。大切な思い出もすぐに消えてなくなってしまうから。それが嫌で、いつからか日記をつけるようになった。昨夜のことはしっかり記しておかないと!
しかしこの既視感はいったいなんだろう。誰かと一緒に夜を過ごしたことなどあっただろうか。誰かになにかを貰ったことなどあっただろうか。
道中、玉佩を見つめながら
~ 第一章 了 ~
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