第321話

母の言葉に絶望を覚えた。ほんの僅かな望みさえも消えてしまった。蓮の死は夢なんかじゃない。



津波のように襲ってくる喪失感が、これは現実なんだと教えてくれている。



「蓮が殺されたのは私のせいだよ……。家族会議に御手洗を連れていってたら蓮は死なずにすんだ……」



「どういうことなの!!」



部屋の窓から蓮の実家が見える。喪服を着て集まる大勢の人々。蓮の母親の泣き崩れる姿を見た瞬間、私の目から苦い涙が零れ落ちた。



「お母さん。わたし、健と離婚する。もう決めたから。向こうが拒否したとしても離婚する。健の家には帰らない。」



「あんた、こんな時になに言ってんの!!冗談でしょ?ちょっと健くん呼んでもいい?離婚するにしてもちゃんと話しなさい!!」



「話すことなんかない。今から、この家も出ていくから……」



「出ていくって、どこいくの!!台風きてんのよ!!家にいなさい!!御手洗さんからも頼まれてるのよ!!今外に出たら危険だから絶対家にいさせてって!!」



「御手洗が来る前に出ていく……」



「玲央とは全く連絡取れないし、あんたたち一体どうなってんの!!出ていくなら行き先ぐらい言いなさい!!」



「行き先はわからない。でも、もう神戸にはいられない。蓮の両親や美羽に合わせる顔がない……」



「駄目よ!!絶対行かせない!!ちょっとお父さんに電話するわ!!待ってなさい!!」

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