第306話
私は自分の部屋に入って電話に出た。部屋の中は真っ暗だ。私にはもう電気をつける気力さえ残っていなかった。
「蓮……」
「よう、おばちゃん。元気?」
「……元気なわけないから。いま本宮さんの家?絶対外には出ないでよ」
「今、外だよ。公園で寝てる。すげー雨降ってるわ。大雨特別警報出てるけど傘がないから、段ボール被ってる。」
「なにしてんのよ!!どこの公園??迎えに行くから場所教えて!!」
「来なくていいわ、鬱陶しい。そっちこそ今どんな状況?本宮と会ったんでしょ?」
「会ったけど……何一つ解決しなかった。本宮さんの部下が御手洗だった……」
「俺を護衛してた刑事か。顔が見えないように変装してたから、なんか変だとは思ってたんだけど、あいつが御手洗かもなんて考えもしなかったわ。そっか……。あいつが御手洗だったんだ。俺、なにしてんだろ。ほんまのアホだね。」
「普通は考えないでしょ……。自分を守ってくれてる刑事が御手洗かもとか……」
「御手洗なら考えるかもよ?ていうか、ごめん。俺なんの役にも立てなくて。おばちゃんを助けるつもりが余計窮地に追い込んだよね。」
「蓮は、悪くない。それより御手洗はいつ蓮を殺しにいくかわからない。今すぐ安全な所に逃げて……」
「もう遅い。俺のことは、心配しなくていいからおばちゃんだけでも逃げろ。まさかとは思うけど、健とやり直そうなんか考えてないよね?」
「……もう遅いって、どういう意味?」
「なぁ、一つだけ質問してもいい?」
「なに……?」
「雨夜に振られた日。もしも、俺がね?健よりも先に、おばちゃんを探しだして、ずっと傍にいて慰めて告白してたら、おばちゃんは俺と付き合ってくれた?」
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