10

第219話

真後ろから飛んできた声に吃驚して咄嗟に振り返った。そこに立っていたのは御手洗だったから全身の血の気が引いた。




「……なんでいるの?」



「それは俺が言いたい。なんで市川さんが俺んちにいるの?」



「……いま帰ってきたの?」



「ううん、ずっと風呂場にいた。市川さんが必死に何か探してるみたいだったから気になって声かけてみた。」



「……わざわざ靴隠してたの?」



「隠してないよ。俺はいつも靴はベランダか冷蔵庫の上に置くようにしてんの。俺がいないって思ったから入ってきたの?」



「…………」



「それでも嬉しいわ。やっと二人きりになれたね。せっかく来てくれたんだから今日は泊まっていってよ。健と一緒にいるのは気まずいでしょ?」



「勝手に入ってごめんなさい。今日は……もう帰る……」



「帰らせないよ。なに探してたの?」



「何も探してない……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る