第193話

健が運転する車で実家にやってきた。実家は二階建ての一軒家だ。無用心にも玄関の鍵は開いていた。



私たちは家には入らずに長いあいだドアの前で立ち尽くしていた。この中に御手洗がいると思うと入ることができなかった。




「紫乃、無理すんな。もう帰ろ?」



「……大丈夫だから」



「全然大丈夫じゃねえだろ。もう20分以上ここにいるし。怖くてしょうがないんだろ?とりあえず車戻ろ?」




「……無理。家族が危ない」




「御手洗さんとなに話すつもりだよ。ヤクザなんですか?とか聞くつもり?」




「……いろいろ質問すんの。職業とか今日の殺人事件のこととか。絶対本当のこと言ってこないと思うけど」



「もうやめようよ。そんなことしてなんの意味があんの?帰ろうよ。」



「……うるさい。帰りたいなら健一人で帰ってよ。私の家族が殺人犯かもしれない人と一緒にいるとか耐えられない」



「犯人なはずないって!!どうせマンションも引っ越すんだから、これ以上関わらなかったらいいだろ!!」




「健はあの男の正体を知らないからそんな悠長なことが言えるんだよ。もう大丈夫だから入るよ……」

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