第159話

美羽の前では平然を装っていたが、頭の中は御手洗のことでいっぱいで動悸が止まらなかった。



健に電話をかけたが電源を切っていたから確かめようがない。あと三十分ほど待って、おばちゃんからの連絡がなかったら警察に通報することも考えていた。




美羽は相変わらずスマホを触りっぱなしだ。一体何をそんなに話すことがあるのだろう。




「まだ客と話してんの?」



「…………」



「美羽?」



「え……?」



「大丈夫かよ。なんか、顔色悪いけど客ともめてんの?」



「月に一回、必ず来るキモい客がいるんだけど……明日がその日だから、ちょっと鬱になってただけ。長い時間相手しないといけないから……」



「他の客に指名してもらったら?いっぱい頼める人いるよね?それか、明日は休んだら?」



「明日はイベントあるし絶対に休めない日なの。他の客にも頼んでるんだけど、そいつが怖いから明日は絶対に店行かないって断られた。ていうか、そいつが来る日は私の客が一人も来ないんだよ……」



「なんだよ、それ。どんなやつよ。」



「客の中で一番金持ちなんだけど……とにかくキモいんだよね……。お多福みたいな顔して、年中、白のタンクトップ着てる。給料日に青い薔薇の花を百本抱えて店に現れて私にプロポーズしてくるんだよ。ヤクザではないと思うんだけど、相当ヤバい人……。店の女の子の話では前科あって、薬とかレイプもやってるとか。あくまでも噂だから真実はわからないけどね……」



「死ねや、そいつ。なんて名前?」



「テッシーだよ。」



「外人?」



「ううん、日本人。名前も年齢も教えてくれないから知らない。テッシーって呼んでって言われたから、そう呼んでる。見た感じでは40代後半ぐらいかな。いや、50いってるかも……」

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