第156話

目眩を覚えた。御手洗が家に帰っていないのなら俺の車を運転しているのはあいつの可能性が高い。いや、御手洗以外に考えられない。




「炊き込みご飯だろ?ブリの照り焼き、肉じゃが、豆腐と揚げの味噌汁、きんぴらごぼう、あとはホウレン草の胡麻和えだ。一人暮らし始めてから料理が上手くなってきたわ。組み合わせとしてはどうだ?この料理に点数つけるとしたら何点だ?」



「一万……」



「なに??一万点もか??」



「一万円貸してくんない……?」



「死んでくれ。」



「……俺もその料理食べたい。今からタクシーでおっちゃんとこ向かうわ。着いたら連絡するから金持ってマンションの下に来てくれない?俺いま一銭も持ってないから」



「娘に借りたらいいだろ!!なんでわざわざワシに頼むんだ!!そもそもお前、娘と車でドライブしてるんじゃないのか!!車はどうしたんだ!!」




「ドライブしてたけど車が突然消えたんだよ!!神隠しよ!!んで、今は俺一人で歩いてる。なんかめっちゃ雨降ってきた!!傘ないし、このまま歩いて帰ったら肺炎になるわ!!俺が肺炎で死んでもいいの??もうさっきみたいに変なこと言わないから今からそこに行ってもいい??」



「もう充分変なこと言うとるわ!!なにがどうなったらそんな面白いことになるんだ!!もう蓮には呆れたわ!!二度とお前の言葉は信じんぞ!!ここに来ても絶対に家に入れないからな!!充電ないから電話切る!!おやすみな!!はい、おやすみ!!」

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