第136話

「俺の悩み相談でもしてた?」




「……仕事の愚痴とか聞いてただけ。御手洗さんのことは何も話してない」



「あいつ仕事してないよね。なんの愚痴があんのよ。」



「……最近始めたらしい。人間関係悪いらしいから、またすぐに辞めると思うけど」



御手洗は私を横目で見てくると「なるほどね」と言ってうっすらと笑った。全てを見透かされているような感じがした。



「……ほんとに、御手洗さんのことは何も話してない」



「俺のことは、なに話そうが全然いいんですよ。ただ、蓮と二人で会うのはやめてくれない?健は、ギリ我慢できても蓮は無理だわ。」



「……わかった」



「事故は偶然だよ。俺が仕組んだと思ってるんだろうけど、冷静に考えればわかることだよね。」



「……父を助けてくれてありがとう。体の方は、もう大丈夫なんですか?」



「全身痛くてしょうがない。でもそのおかげでお父さんと仲良くなれたし連絡先も交換できたから全然いい。今度、家にも遊びにきてって言われたわ。柴犬飼ってるんだって。市川さんは犬と猫どっちが好き?」



「……猫かな」



「じゃあさ、俺と結婚したら一軒家に住んで猫飼おうよ。俺と市川さんと猫で毎日楽しく暮らすの。絶対に今の生活より幸せだと思わない?」



「…………」



「てか、後ろのベンツまだしつこく煽ってきてるわ。そろそろ下道走るね。」

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