第110話

この日を境に私と健の間に亀裂が入ってしまった。




健は残業を言い訳に帰りも遅くなり態度も冷たくなっていった。御手洗の話をしようものなら、なにかと理由をつけて家を出ていくようになった。悪態ばかりつく私にも嫌気がさしていたのだろう。




家事は私に任せっきりで、酒は相変わらず飲んで帰ってくる。新婚生活どころではなく地獄生活だった。次第に私たちは顔を合わせる度に喧嘩をするようになっていた。






御手洗の件で警察にも相談に行った。あまりに酷くなるようなら警告や禁止命令を出すみたいなことを言われたが私が求めているものは、そんな中途半端なものではなく御手洗の逮捕だ。




だが何度相談しても証拠がないとこっちも動けないと言われ諦めて帰ってきた。




なんとか証拠を作り出そうと必死に動いたが、私が警察に行ったのを知ったのか御手洗は、なかなかボロを出さなかった。





あの大雨の日以来電話がかかってくることはなかったし、すれ違っても軽く挨拶してくる程度で証拠になりそうなストーカー行為は全くしてこなかった。

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