第92話

今の私は狼狽して正気を失っている。自分でさえも、何を言っているのかわからなくなっているのに、健からしたらもっと混乱しているだろう。



「……まじで、どうしちゃったんだよ。今日、ちょっとおかしいよ。俺が悪かったから…。許してくれるまで謝り続けるから!ゲームばっかしててマジごめん!!ごめんなさい!!もう酒もゲームも辞めるから。本当に悪かった!!」



「私はおかしくないよ。あの人が狂ってるだけなの……」



「わかったから!!もうこの話やめよ?ちょっと気分転換に出掛けない?久しぶりに外食でもしようよ!!カウンター寿司でも食べに行かない?」



「健は全然わかってない。あの人は、サイコパスなんだよ。そのうえ、重度のストーカーなの。私、なんかよくわからないんだけど、タイプとか言われて気に入られてるみたいなの……」



「まだ言うか……」



「……御手洗さんが家に来た日、健は酒飲んでソファーで爆睡してたじゃない。その時、私なにされたか知ってる?寝室のベッドに押し倒されて無理やりキスされたんだよ?昨日だって健がゲームしてる時に、家に来られて襲われそうになったんだから。これでもまだ信じないの?何年も一緒にいた私より、昨日今日知り合った御手洗さんを信じるの……?」



「もうやめろよ!!そんな話聞きたくねえわ!!ちょっと頭冷やしてくる!!あとでちゃんと聞くから!!」



健は髪をかきむしりながらソファーから立ち上がった。その瞬間、インターフォンが五回続けて鳴った。

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