第70話

自分の家に戻るなり鍵を閉めてチェーンロックをかけてやった。今日は、もう健の顔を見たくなかった。帰ってきたとしても、お互いまともに話ができる状態じゃない。



あんな酔っ払いのゲーム馬鹿は、ずっとストーカー男の家にいればいいと思った。



カレーを常温で放置していたせいか、家の中は微かに変な匂いが漂っていた。梅雨時だから腐りかけているのだろうか。



義母が来たらまたネチネチと嫌味を言われるのだろう。なにもかもどうでもいい。とにかく渇いた喉を潤して眠りにつきたかった。



冷蔵庫に入れてあるミネラルウォーターを飲もうとキッチンに足を踏み入れた。その瞬間、目に飛び込んできた光景に心臓が止まりそうになった。







「おかえり。」




「…………」



御手洗は、昨日と同じテーブル椅子に座っていて青い紙コップに入った飲み物を飲んでいた。テーブルの上には吸いかけの煙草と灰皿が置かれてあった。




「何してるの……?」



「カフェラテ飲んでるんです。今日は、ローソンの。知ってます?ファミマのカフェラテより高いんですよ。」



「そうじゃなくて……。なんで私の家にいるの……?」



「鍵が開いてたからですよ。無用心すぎて心配になるわ。今がどんな時代かわかってんの?どこいく時も、鍵だけはちゃんと閉めてこないと。」

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