第29話

――――――数ヶ月前







「高瀬さんですか?」




日曜日の夕方頃、家から徒歩三分の場所にある大型スーパーで買い物をしていると背後から突然声をかけられた。




「高瀬さん、ですよね?」



「えっと……」



振り返るも言葉に詰まった。そこに立っていたのは紺色のスーツを着た大学生ぐらいの男だった。




「自分、御手洗ミタライと言います。高瀬さんの隣に住んでる者なんですけど。」



「御手洗……さん……?」



「自分、あのマンションで一人暮らししてるんですよ。隣に挨拶に行かなきゃってずっと思ってたんですけど、結局行けてなくて。」



「…………」



「今も声かけようか迷ったんですけど、思いきって声かけてしまいました。」



「…………」



「高瀬さん?」



「…………」



「え?俺、なんか変なこと言いました?」

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