第11話

ソファーに座って美羽を待っている間、部屋の中を見渡した。床に散乱している一つ一つの物は高級品だ。



エルメスのバッグ、シャネルのピアス、ロレックスの時計。どれもこれも私には縁のないブランド品ばかり。



ゴミ箱の上には捨ててあるのか置いてあるのかわからない大量の服。



あのTシャツ一枚で、何ヵ月分の食料が買えるのだろう――。何故かそんな貧乏くさいことを考えてしまった。



「はい、どうぞ。手作り特製アイスコーヒー。」



「このグラス、めっちゃときめく!!どこで買ったの??」



ガラステーブルの上に置かれたアイスコーヒーは昔ながらの喫茶店にあるような脚付きグラスだったから一気にテンションが上がった。



「可愛いでしょ。超絶金持ちなお客さんに貰ったの。ていうか、旦那どんな感じ?相変わらず喧嘩ばっかしてんの?」



「昨日も、家出ていって帰ってこなかったよ。実家に泊まるってさ。」



「ええ??また??」



「最近は、毎日喧嘩だよ。私のこと完全に頭おかしい女って思ってる。」



美羽と蓮は、健のことをよく知っている。一年ほど前までは、四人で外食したり宅飲みしたりもしていた。



「隣の住人の件?えっと、なんて名前だったっけ。あ、御手洗だ。まだ、ストーカー行為してくるの?」



「段々と酷くなってるよ。あいつのせいでここ1ヶ月ほど完全に睡眠不足。1日2時間寝れたらいい方。夜中の3時とかにインターフォン鳴らしてくるし。それも決まって健が家にいない時。」



「夜中の3時とか、こっわ!!そんな夜中にインターフォン鳴ったら死ぬ!!無理無理!!」



「健は酔っ払いのイタズラだとか、私が寝ぼけてたみたいに言うけど。普通に考えて御手洗に決まってるよね?」



「健くん最低だわ!!そんなの御手洗に決まってるし!!ムカつく!!」

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