東国の勇者の場合2

 しばらくベッドの上でリニアさんによるこの世界の講義が始まった。まぁ、『ベッドの上』と言っても男子全員が想像するようなものでもない。ただ単にこの部屋にはいすが置かれていなく、座って落ち着いて話をするとなると、ベッドの上に腰掛ける以外方法がなかったのだ。

 しかし、ありがたいことにリニアさんの説明はとても分かりやすい。おかげで自分がこの世界に呼ばれた理由と、この世界についてあらかた知ることができた。

 この世界は人間の住む四つの国でできているらしい。今自分のいる国は東に位置する国の『アパン』ということだった。

地図を見せてもらうと国土の四分の一が海でその海を取り囲むように大陸と国境が存在する。海には島がいくつか点在していて、一番外側で少し突き出したように存在する島はまるで日本列島のように細長くできている。それはまるで城壁のように海にからの侵入を拒んでいるように見える。

 四分の一が海と言っても島の数があまりにも多く島と島との感覚も狭いため船をつかったり、橋を架けたりしているため交通の便はとてもよいとのことだった。その為、物流は水運が発達しているとのことだった。

 首都は一番外側の細長い島にあり名を『エキドウ』というらしい。どうやら、大陸側からしか攻められたことがなく、その島が一番安全ということらしかった。

 おそらくこの世界の海洋国家はまだこの国だけなのだろう。リニアさんの言うには海に面している国はほかになくそもそも海に面していないか、面していても国家として何かに利用できるほどは長い距離ではないらしい。これでは海洋国家と大陸国家という概念ができていることすら怪しいものだ。

 そしてこの国の一番の強みは、魔族という人種が住む魔界大陸と国境線で接しているところが圧倒的に少ないということだ。北側の大陸部分のわずかな範囲が接しているだけである。でもそれもほかの国と比較しての話である。

 しかし、わずかでも接しているということは、そこから攻め込まれるかもしれないということで、別に油断はできないらしい。

 そしてその危惧しなければ事案が理由で、自分は元居た世界からこの異世界に召喚されたようだった。

 この世界では古くから人間と魔族が争いを行ってきたらしい。理由は至極簡単なものである捕食者である魔族と被捕食者である人間との命のやり取りだった。何やらありきたりなファンタジーゲームや異世界物によくある設定と同じである。こればっかりはため息ばかりが出てくるものだ。

 そんな中で人間を助けてやりたいと思った女神様が十数年に一度勇者を異世界から召喚するらしい。その勇者の人となりはその時々によって変化し、時には武の達人である老戦士だったり、あるときには圧倒的なまでの天才背を発揮し最高軍師と呼び声高い少女であったり、はたまたある時には勇者という言葉に人一倍憧れを持った青年であったり、老若男女あらゆる人間が召喚されてきたらしい。そしてその勇者は数に決まりはなく1人の時もあれば2人や3人のときもあるそうだ。

 召喚されるときはいつも決まって前回送り出された勇者が、死んでしまってひと月が経たないうちにどこかの国の王宮に召喚されるらしい。そして今回は自分が選ばれてアパンへ飛ばされたらしい。

 つまり自分がこの世界に飛ばされた理由は魔族を打ち滅ぼし、この世界を救うことを義務図けられているからということになる。考えただけで気が滅入ってくる。


「めんどくせぇ」


つい口走った言葉に呆気にとられるリニアさんの表情が目の前にあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る