第9話 構造変化と新武器

 再び足を踏み入れたグンマダンジョン。事前に聞いた話では、このダンジョンは入る度に構造が変わるローグライクなダンジョンらしい。なら、ここからが本番といっても過言じゃない。


 ただ、あの筆記魔法のメッセージがあったように、地下3階にヴァルガードがいるのは間違い無いだろう。


 構造が全て変化するなら、先に挑んだ探索者が書いたあのメッセージ自体が消えるか、書いてあったとしてもボスとは遭遇しなかったはずだ。あの時メッセージとヴァルガードが結び付いたのが偶然だとは思えない。


 つまり、構造は変化しても変わらない階層もあるという事だ。なら、最初に俺がやることは、ヴァルガード戦に向けて1階層と2階層でとにかくアイテムを集める事だ。少しでも戦闘を優位にする為に。


 長い階段を降りる。さぁ、どんな構造になっている……?


 期待に胸を高鳴らせながら足を踏み入れたそこは……。


「な、なんじゃこりゃ……?」


『これは……』


 リレイラさんもヘルムの眼界魔法オキュラスを通じてこの光景を見たようだ。


 俺の目の前に広がるのは、はるか向こうまで見渡せる広大な貯水池のような場所だった。細い通路が伸びて、周囲が四角い人工池のようになっているダンジョン。水門のような物も見える。あのギミックを使って水を排出しないと道が現れないタイプか。


「マジかよ……構造が変わってもあの石壁のダンジョンのままかと思ったぜ」


『この構造変化……もしかしたら生物群系バイオームまで変わっているかも』


「よく知ってますね。バイオームなんて言葉」


『君がゲームの話ばかりするから調べた』


「ハハッ、親切ですね」


 嬉しいのだが、今は状況的に乾いた笑いが出てしまう。バイオームが変わるってことは……要は生息する生物が違うって事だ。となるとドロップアイテムも変わる。しまったな……チャクラムやナイフ残しておけば良かった。


『もしかして、弱気になってる?』


 恐る恐るという感じのリレイラさんの声。また見えた彼女の新たな一面。今朝の事を思い出してまた顔が熱くなる。俺は、彼女を心配にさせないよう強気な事を言ってみた。


「逆に燃えます。大丈夫です」


『そうか。君が頑張っている所、見ているからね』


 ……昨日からなんか優しいな、リレイラさん。


 よし。狼狽えてしまったけど、とりあえず思考を切り替えよう。過ぎた事は考えない。アイテムを売らなかったらマジックバッグは手に入らなかったんだ。これでいい。今は目の前の事だけに集中だ。



「ふぅ、行くぞ!」



 俺は、貯水池に挟まれた道を歩き出した。




◇◇◇


 水路を歩いて水門へ。そこに設置されたバルブのような物を開ける。すると貯水池から水が流れ、短い下り階段が現れる。その奥には登りの階段が。やっぱりな、こういうタイプのダンジョンか。


 慎重に降りて行く。池底に着くと階段を登ってまた次の水路へ。それを1時間ほど繰り返し、ある貯水池の水を抜いて通り抜けようとした時、壁に空いた大穴からワニ型のモンスターが飛び出してきた。


「グワゥ!!!」


「うお!? っぶねぇ!?」


 突然噛み付いて来たのをローリングで回避する。ワニは、尻尾をユサユサと揺らしながら俺を威嚇してくる。その尻尾に、一瞬バチりと電撃が迸った気がした。


「コイツ……水生生物のくせに電撃属性なのか?」


『サダリゲイトだ。尻尾から放つ電撃に気を付けろ』


「はい!」


「グアウウウウウアアアアアアア!!!」


 サダリゲイトが尻尾から電撃を放出する。それを避けてショートソードを引き抜いた瞬間、ショートソードに引き寄せられるように電撃が向かって来た。


「マジかよ!?」


 走って逃げるが電撃は俺を追いかけて来る。速度が遅いのが幸いだが、やたらしつこい。咄嗟にショートソードを手放したが、剣に直撃した電撃は俺の右手にもバチリと衝撃を与えた。


「痛って!?」


『大丈夫かヨロイ君?』


「全っ然! 大丈夫ですよ!!」


 痛みで声を荒げてしまう。痛覚軽減の符呪が引き下がったせいで痛みが上がっているな……辰巳のヤツ、これが戦闘でプラスになるのかよ!?


『電撃魔法は金属に引き寄せられる性質があるが……これほど効果を発揮するのか? このダンジョン固有種なのかも……』


 リレイラさんが呟く声が聞こえる。追尾性能は普通のサダリゲイトより性能が高いのか。気を付けねぇと。


「グウワオオオ!!」


「っぶねぇな!」


 先程よりも余分に電撃から距離を取る。よし、今度は避けられた。鎧の素材は異世界製の特殊金属だ。これだけだと反応しないみたいだな。ショートソードが無ければ追尾は無い。


 ショートソードをその場に置いてサダリゲイトの周囲を駆け抜ける。直線に放たれる電撃を躱していく。だが、攻撃は当たらないが埒が明かない。相手の攻撃の隙を突いてショートソードを拾わねぇと。


 走りながら観察する。よく見るとアイツ、電撃を撃ってから次の電撃までタイムラグがあるな。位置取りを考えながら勝負決めるか。


 腰のナイフに手をかける。走りながらヤツの次の攻撃を待つ。


「グアウオ!!」


「今だ!!!」


 ヤツが尻尾から電撃を放った瞬間、ナイフを投擲する。俺に向かって放たれた電撃は、ナイフに引き寄せられるように直撃した。


「グアアアアアウウウ!!」


「これ以上やらせるかよめんどくせぇ!!」


 ヤツが次の電撃を放つ前に全力で走る。ローリングしながらショートソードを拾い上げ、サダリゲイトの尻尾を根本から切り飛ばした。


「グギャアアア!!!」


 暴れ回るサダリゲイト。半狂乱になったヤツが俺に襲いかかって来る。ヤツが食らいつこうと口を開いた瞬間、口の中から脳天へショートソードを突き刺した。


「オラァ!!!」


「グギャ!? ア、アアア……」


 ドスンと倒れこむサダリゲイト。その体からレベルポイントの光が溢れ出す。念の為ヤツを警戒していたが、ヤツが再び起き上がることは無かった。



 ──レベルポイントを500pt獲得しました。


『中々強力な敵だったな』


「やっぱ痛いと警戒しますね」


『ふふっ。そのおかげか回避行動の判断が良かったぞ』


 リレイラさんが褒めてくれる。そんなに回避上手く行ってたか? 攻撃受けないように必死だったから自分じゃ分からないな。


「そうだ、何かドロップアイテムは……?」


 ヤツの体を調べていると、尻尾がボロボロと崩れ落ち、その中から半透明のロープのような物体が現れた。2メートルほどあるロープ。それを近くの水で洗って鑑定してみる。



名称:サンダーウィップ

 分類:鞭

 属性:雷

 効果:電撃を帯びた鞭。鞭を叩きつけると、周囲に電撃を放つ。使用回数15回



「お! 使用回数多いのいいな!」


『もしかしたら、回数は倒した敵によって変化するのかもしれないな』


 敵の強さに? なら、積極的に強い敵を倒すのもありだな。


 マジックバッグに手に入れた鞭をしまう。中にスッポリと収まるサンダーウィップ。マジックバッグもいい感じだ。これなら相当な数のアイテムを持ち運べそうだな。



 よし、このエリアは徹底的にモンスターと戦ってやるぜ。




◇◇◇


 その後、俺はこのフロアを隅々まで探索した。遭遇したモンスターはピラニアのようなバイトフィッシュにイカのようなスカリィッド……レベルポイントは稼げたものの、どれも武器になるアイテムはドロップしなかった。


 レベルポイントの獲得はサンダーウィップのおかげで楽勝だった。貯水池にモンスターが見えたらサンダーウィップを垂らす。すると中のモンスターが感電して水面に浮かび上がる。それを鞭で絡め取って引き寄せ、ナイフでトドメを刺す。これだけでレベルポイントを稼げるからボーナスステージみたいなもんだ。


 バイトフィッシュやスカリィッドは1体30pt。だが、かなりの数を仕留めたおかげか600pt近く稼ぐ事ができた。


 あのサダリゲイトも電撃を使って狩りをしていたのかもな。


 稼いだレベルポイントを使ってスタミナを5%上昇を獲得。探索がより優位になった。サンダーウィップの残り回数は7回……これだけあれば十分か。


『階段があったぞ。私がマッピングした地図と見合わせると、このフロアは全て制圧したようだ』


「了解です」



 次はどんなヤツがいるかなぁ。楽しみだぜ。



 新たな武器を手に入れて、俺は第2階層へと降りた。




───────

あとがき


 ボス戦を目指して再びアイテムを集める461さん。彼の前にモンスターの群れが……?

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