24話 海神のマジモード

 私たち一行※は、海に面したカース城とその湾一帯が見渡せる高台に到着した。

 (※アスモデウス、べリアス、エスペン、ヴィティ)


 ***


「もう、死ぬかと思った……」


 解凍したエスペンは、がくがく震え涙目で鼻水をすすり上げた。


「だからゴメンって、つい」 


 エスペンの、スライディング合流&キラキラ笑顔に感極まってしまった私は。どさくさに紛れエスペンに抱きつき、カチコチに凍らせてしまったのだった。


「つい……って、ヴィティ様。それもだけど……これって、いったいどういう状況なんですか?」


 黒ずんだ高い城壁と十基の塔が並ぶカース城からは、あちらこちらで黒煙が上がり。城壁の上には、青い竜のような巨大な生物が、さしずめ蛇が蜷局を巻き鎌首をもたげるようにドーンと鎮座していた。


 次の瞬間、

 ブシャ――――――――――!!!!!


 竜の口から水ブレスが放たれ、城下町を破壊した。


「うわっ、何だありゃ?」


よ」


「海神。あれが……そういや2か月ぐれぇ前に、ノールのアレクサンドル皇帝と協定を結んだとかなんとか聞いたな」


「これが、海神のマジモードか」


 エスペンは、険しい表情で拳を口元に当てた。


「海神って!? ちょ、それヤバくない!? んじゃ」

「べリアス、逃げない!」

「はひっぃぃぃ!!!」


 私に怒鳴られたべリアスは、その場に直立し悲壮感を滲ませた。

 

 それにしても―――ノールのアレクサンドル皇帝とメルヴィルが協定?

 嫌な予感する。

 もしかしたらメルヴィルは、アレクサンドル皇帝にのかもしれない。


 じゃない、絶対、操られてる!


(※小説では、『ノール王族は、古代の言語で海神を操ることができる。』という設定だった。)


「詳しい話しは後。エスペンとべリアスは、ルイーズの救助」


「え!? なんで!? こんな弱そうなチビと、いやだ!!!」


「べリアス! あなた『移動用リング』持ってるでしょ! ルイーズを救助したらすぐにバンディ城に逃げていいから」

「わかった。おい、チビ行くぞ」

 

 返事早っ。


「チッ」

「お、お前、いま舌打ちした!? この私に向かって」

「うっせーな、黙れ!」


 エスペンが、低い声でべリアスを一喝した。

 その瞬間。

 ブワッ―――とエスペンの肌が真っ黒に変化し、頭から二本のねじれた黒い角と、背中に銀色の翼が形成された。 


 エスペンはこちらを振り返り、気怠そうに口を開いた。


「……そんじゃ、行ってきます。(怒声)おら、行くぞ!」

「う、うん。行くけど、行きますけど……ってか、君キャラ変わりすぎじゃない……あ、イタっ……いだだ、ぐるしぃって……」


 エスペンは、ぶつくさ言うべリアスの胸ぐらを掴み飛び立った。

 

 銀の翼……かっこいい。


 圧倒的なに呆然とした。

 そういえば、すっかり忘れてたけど、エスペンはジェダイド帝国海軍精鋭部隊(SNOW SEALS)の元隊長だった。心強いというかなんというか、とにかく一緒に来てくれて本当に良かった……。


 

「んで、ヴィティ。どうするんだ? アレ」


 アスモデウス殿下の声に我に返る。


「アスモデウス殿下は、私をメルヴィルの近くに降ろしたら、すぐにお逃げください。あとは、私に任せて!」


 

__________________________


 次回、明日更新予定。

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