9.夏空のもと、彼らは行く③

「コウジ、お前ユウタにカードパック一つ奢ってあげろよ」


 リョウタが、口と手をモジモジさせながら頭を掻くコウジに向けて言う。


「えぇ、流石にそれはあんまりだ」


 リョウタの提案にコウジが反対の意を示す。


 それを見てユウタが「カードパックは高いからいいよ。その代わり、ジュースがほしいなあ。のどカラカラでさ」と反応した。


「それなら行けますユウタくん」


 言った直後にコウジが腰を直角に曲げてお辞儀をしてきた。


 それを見てユウタとリョウタは大きな声で笑う。


「じゃあありがたくいただきます」


 ユウタは駄菓子屋に三人で入りながらコウジに向けて言う。


「コウジは今日のインタビュー終わらせて宿題は後どれくらいなの?」


「インタビュー内容をノートに書いたら終了だよ、ユウタは?」


「僕は昨日で全部終わったよ。後は夏休みを楽しむだけだね」


「流石だねー。リョウタは宿題終わった?」


「へへ、俺もあと一つ。そのインタビューを終わらせるだけだぜ」


 おおー、とユウタとコウジが感心する。


「リョウタは誰にインタビューしに行くの?」


 暫くの間沈黙が流れる。






「……中井先生」

 中井先生とは、ユウタたちの担任の先生の事である。



 ユウタは思わず吹き出す。釣られてコウジも吹き出す。


「しょうがないだろ、頼る人が誰も思いつかなかったんだよ!」


 笑うなよぉ、と叫ぶリョウタ、笑い続ける二人。

 駄菓子屋の店主が、店の中ではしゃぐな、と怒鳴り散らす。


 三人は急いでジュースを買って自転車に乗る。




「じゃあいこうか!」




 三人は真夏の炎天下の中、元気よく自転車で駆け出した。

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