7.ユウタと-----①

(何で僕は一人でいるんだろう)


 ユウタはそれまでと明らかに纏わりつく空気が変わったことを感じて顔を上げる。


(寒い……)


 ユウタは何も見えない空間に座っていた。

 先程まで見えていた綺麗な水色と若草色の風景がいつ間にか不気味な灰色に変わっている。


 座ったまま周りを見回したが、周囲に光を放つものはなく自分の身体がその空間にあるだけである。


 ユウタは立ち上がるわけでもなく、座った姿勢のまま、何も無い灰色の先を見つめ続ける。


(ケンカしたわけじゃない)


 寒気は次第に増していく。


(何で二人は約束の時間に来なかったの)


 周りに黒い霧がかかり始める。


(僕だけ仲間はずれにされた?)



__________!



 灰色の空間に一瞬一筋の光が差し込むが、すぐに消える。


(初めから二人とも僕の事なんか嫌いだったのかな?)


 差し込んだ光により霧散した黒い霧が再びユウタを囲い始める。


(何か二人が嫌がることをやっちゃったのかな?)


 辺りは一層暗くなる。灰色はその濃さを強めていく。


(また学校が始まったら二人と顔を合わせなきゃならない)


_____顔を合わせたらどうなる?


(もっと嫌な気持ちになるかもしれない)


_____だったらどうすれば良い?


(もう二人の顔なんか見たくない……!)




_____ならばいっそのことともだちのまえからすがたをけすのもてじゃないかな




_____ワザワザイヤナオモイヲシニモドルコトモナイヨ








「……うん、そうだね」







 黒い霧がユウタを囲み、どこかへ攫っていくかのように激しく渦巻き始める。


 ユウタはその霧を受け入れるように、抱えていた膝を一層強くしめ、身体を丸めながら目を閉じる。


 ゆっくりと、霧が身体の中に入り込んでくるのを感じる。


 とても寒い空間にいたはずなのにも関わらず、ユウタは不思議と温もりを感じていた。


 霧は不気味なまでに生温かい。


 その温度に身を任せれば今よりずっと楽になる、そんな気がする。




 意識が遠のいていく。




_____行ってしまってはダメ!

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