第50話 提案

 ここは何の変哲もないDランクダンジョン。そしていつものメンバーといつも通り探索する。……はずだった。


「エミルさん、結界魔法を使うための魔力制御は決して難しいことではありません。私の魔力の流れを感じ取って下さい」


「はいっ!」


 なぜか今、俺達のパーティーには聖女様がいる。陣形はというと、エミルと聖女様を中心として前にカリンカさん、後ろに俺とミヤという配置。


 なのでそれはもうハッキリと見える。エミルと聖女様が手を繋いでる光景が。それはさながらデートのようでありました。


「ねぇリクト、どうしてエミルと聖女様は手を繋いでいるの?」


「分からん。好きなんじゃないか?」


「どっちがどっちを?」


「聖女様がエミルのことを」


 なんて、適当に答えてみた。だって本当に分からないんだから。


「まーた適当なこと言っちゃって。でもさ、聖女様って自由に恋愛できるのかなって思わない?」


「確かに厳しそうだよな」


「だよね。それに聖女様とお近づきになれる男の子なんて簡単にはいないわよね」


「そうなると出会いもなかなか無いだろうな」


 聖女ともなると友達一人つくるのにも制約がありそうで、そう考えると改めて大変さが分かるというものだ。


 岩場をしばらく進んでいると、武装したオークの群れに出くわした。どうやらエミルの結界魔法はまだ完全ではないらしい。


 オークは斧や剣、木製の盾など、どこから調達したのか分からない装備を身に付け、すでに戦闘態勢だ。


「俺にやらせてください!」


 そう言ってカリンカさんのさらに前へと躍り出る。今までに『レベル』が上がっていることもあり、もはや敵ではなかった。


 片手剣で全滅させたが、不覚にも腕に傷を負ってしまった。もちろん【ダメージ調整】のスキルを使ったのでワザとだ。全てはエミルのレベルアップのため。


「エミル、回復してくれ」


「わかりました!」


 エミルに手を離されどこか寂しそうな聖女様の視線を受けながら、エミルにギュッと抱かれた腕にできた傷が塞がっていく。これがもう気持ちよくてたまらないんだ!


「治療、終わりましたー!」


「エミルありがとう」


 それからも探索は続き、モンスターと出遭うと俺が戦い、その後エミルに回復してもらうということが何回か続いた。


 そして安全地帯に着いた時、カリンカさんが俺のほうを向いた。


「リクト。ここまで君を見ていたけど、やはり君は無茶をしすぎだ」


「大丈夫ですよ。カリンカさんには遠く及ばないですけど俺だってレベルアップしてますから」


 だけどカリンカさんからの返答はなく、代わりに答えたのは聖女様だ。


「リクトさん、実はですね。カリンカさん、エミルさん、ミヤさんの三人から私に相談があったのです。リクトさんが無茶ばかりするので指導をしてほしいと。そして先ほどからの行動を見ていて納得しました。なぜあのようなことを?」


「防御には自信があるんです。それにヒーラーのエミルは当然として、戦闘向きのカリンカさんとミヤも、できる限り守りたいと思っています」


「どうしてそこまで強く願うのですか?」


「うまくは説明できませんけど、俺にはその力があると思っています。エミルは俺が慣れない土地で不安だった時に最初に出会った人で、ここまで一緒に過ごしてきました。それからカリンカさんとミヤとも出会うことができました。そして全員が今もこうして俺と同じパーティーでいてくれる。だからあれは俺の勝手な恩返しなんです」


 正直に言うとダメージ調整があるからというのも大きいけど、誰にも傷付いてほしくないのは本心だ。


「そしてエミルは聖女になりたいと言いました。だったら俺はその手助けがしたい」


「リクト、君はそう思っていたんだね」


「リクトって変だけどたまにマトモよね」


「私のために、リクトさん……」


 三人の様子を見た聖女様は少しだけ頷いて、俺に語りかける。


「リクトさん、それなら聖騎士を目指してみませんか?」


「聖騎士ですか?」


「はい。護衛などの主に聖女に関する任務にあたる部隊のことです。簡単になれるものではありませんが、もしエミルさんが聖女になれば、公の場でもそばにいることができるでしょう」


 冒険者から聖騎士へ。もしそうなれば大変な名誉だが、俺の目的はエミルの手助けであって、自分がどうなりたいとかは考えてなかった。


 でも、そうなるとパーティーは解散ということに。カリンカさんとミヤ。二人とも人として好きだから繋がりが無くなるのは嫌だな。


「すみません、急な話なので考える時間がほしいです」


「もちろんです。リクトさんの人生ですから、リクトさんの思うように生きてください」



 そして探索を終えギルドに戻り、報酬を受け取った。


「とても貴重な体験でした。ありがとうございました。それでは私はこれで失礼いたします」


 そう述べると聖女様は護衛と共に帰って行った。


(聖騎士、か……)


 聖女様からの提案。どうやら真剣に考える必要がありそうだ。


「ねぇリクト」


「ミヤ、どうした?」


「エミルと聖女様、結局ここに着くまでずっと手を繋いでたわね。どうしてなの?」


「分からん。好きなんじゃないか」


「どっちがどっちを?」


「聖女様がエミルのことを」


「またそんな適当なこと言って。でも聖女様、なんだか嬉しそうだったわね」


「そうだな」


【聖女と行くダンジョン探索・無事終了】

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